読んでよかった2021年3月
2021年3月に読んで(見て)よかったものを順不同で紹介します。ビジネス系とTL(ティーンズラブ)は全然「よかった」が別軸なので下の方で別にまとめております。
暇と退屈の倫理学
「花束みたいな恋をした」を見てからというもの、労働と人間の関係に興味が爆上がりしていて、ずっと自分の中のホットトピックになっている。「暇と退屈の倫理学」は名著と言われているだけあってメ~~チャクチャ面白かった。
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月25日
いまの興味三本柱は「労働」「暮らし」「お金」。つまり「花束」なんですよ…(ろくろ)
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月25日
すでに私たちの余暇は労働のために管理されたものになっている。という現代労働者代表が麦くん。絹ちゃんは労働と余暇を切り離したところでやっていたけれど、人生労働の時間のほうが長いので飽きてしまい、労働に「やりがい」を求めてしまった。2人とも「暇と退屈の倫理学」を読んでおくべきだった…
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月25日
「現状維持」とはパスカルの言葉を借りれば「部屋に一人で静かに座っていること」。でも麦くんも絹ちゃんもそれでは退屈してしまって、調布駅徒歩30分のあの部屋から出てしまう。だから必然的に不幸は訪れるのじゃね、花束完全に理解した(完全に理解したとは言っていない)
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月25日
「暇・退屈」と「労働」の関係を書いた名著で、ずっと前から積んでいたけど「今だ!!!」と思って読んだらスゲ~面白かったです。人々が労働とどう付き合ってきたのか(あるいは労働によってどう管理されるようになっていったのか)ということがどんどんわかり、結果として「花束みたいな恋をした」のこともよくわかるようになります……。
ちなみに冒頭近くにある「定住と退屈」の話は人間が狩猟民族から今にいたるまでどう変わってきたかという話をしていますが、「スマホ脳」も似たような話からはじまるので勝手に相補性を感じて楽しかったです。
表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
オードリー若林の「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」もうめちゃくちゃよかったですね。冒頭の家庭教師をつけ始めたところからもうすごいんですが、テーマが「資本主義と新自由主義にどう抗うか」で、それを本当にストレートに話しているんですよね #今日の推し本https://t.co/kOBZIsEo2w
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月4日
新自由主義に居心地の悪さを感じ続けている若林が、社会主義のキューバに行って、定住しない生き方をする家族に出会いにモンゴルに行って、爆発する自然を見にアイスランドに行って、同調圧力と競争意識が渦巻く東京に帰ってくるという。
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月4日
こないだの「あちこちオードリー」のCreepy Nuts回が自分の中で副読本みたいになっていた。もう若林は人見知りじゃないし卑屈でもない。稼いでいるし家庭教師をつけて勉強している。そういう自分が日本の読者からどう見られるのは百も承知で、偽らずに書いている感じの本で素晴らしかった
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月4日
オードリー若林のエッセイは「ナナメの夕暮れ」「社会人大学人見知り学部卒業見込」も読んでいるのですが、ウソをつかない(ように見える)のがいいですよね。冒頭で言っていたことを本の後ろ側で否定するようになっている(書き手の変化を隠さない)。なんというか「自分が作ったキャラクターを演じない」というか。
文庫になる際に「モンゴル」「アイスランド」「コロナ後の東京」の3編が加筆されて、若林が4つの旅を通して何を考えようとしていたのかというような大きな構図も見えてきて、小説っぽさも感じました。もういろいろな人が「小説書きませんか?」と声をかけまくっていそう。
ニューヨークで考え中
「ニューヨークで考え中」で、3巻の段階で近藤先生が1巻を読み返して「今だったらこんな表現をしない」と怖くなったり省みたりしているのがすごくよくて、近藤聡乃ですらそうなのだから我々はもっと間違えていて、それを省みることをもっと恐れずにできるといいなと、最近はそういう気分です…
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月12日
「A子さんの恋人」と対になっているところがあるよ…と友人たちから言われていて、「A子さんの恋人」が好きすぎるゆえに読めていなかったのですが、読んでみたらすごくよかった。1巻から3巻にかけて、世界が近藤聡乃にネタを与えているというか、近藤聡乃が生きる道が世界になっていくというか、世界を見る目は変わっていないのに世界がどんどん変わっていくライブ感みたいなものを感じる作品です。
ちなみに「ユリイカ」の近藤聡乃特集もすごくよかった。「A子さんの恋人」についての藤本由香里さんの論考を読んで「……これはシンエヴァなのでは!?(円環を打ち破るのは第三者…!!)」と勝手に相補性を感じていた。
シン・エヴァンゲリオン劇場版
給料日ラジオでも話したのですが、初見時は「こんなに完璧に終わらせなくていいじゃん……」となんだか悲しい気持ちになってしまったのでした。が、時間がたつにつれてしみじみ好きになってきている…。
私にとってエヴァンゲリオンという作品は、メッセージのために設定とキャラクターが作られ動いていくものだなという印象があって、結局マリが何者なのか…と考えたときに、これは我々観客なのではないか?と思ったのでした。シンジくんを救ってあげたい、エヴァを楽しく動かしたい、アスカと仲良くなりたい、綾波の心を動かしたい。マリを「観客の願い」と考えるのはちょっと自分たちをキレイに言いすぎ感があるんですがまあ。
あわせてNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」の庵野秀明回と、安野モヨコの展覧会図録「ANNORMAL」、安野モヨコの有料noteもよかった~。林原めぐみの「林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力」も今のタイミングで読めてよかった。
シンエヴァ公開に合わせて書かれたnoteやプロフェッショナル庵野回での安野モヨコ先生の発言を見ると、「いやあなたも大天才なんですよ!」と言いたくなってしまうけど、才能とともに生きた結果との共生を試行錯誤している人に「お前は天才だ」と言い続けるのはひどいのかもしれないと思う…
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月27日
昨日の「プロフェッショナル」庵野監督回に出てくる林原めぐみさんのアフレコの様子がすてきだったので読んだ「林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力」すごくよかったです!林原さんが綾波の「感情」にどう向き合ったのかがつづられてます #今日の推し本https://t.co/Qe3bAb19cm
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月23日
「プロフェッショナル」もわりと筋書きは「天才と彼を支える人たち」というラインを演出していたなと思うのですが、「庵野に振り回される人々」というのは実はそれぞれ天才なのであって、…といろいろもやもや考えてしまいますが、安野モヨコは「見せたい自分」の演出が抜群にうまく(「美人画報」のときなんて本当に本当にすごかった)、うますぎるくらいなのですが、今は見てほしいストーリーがこっちなんだな、と受け止めたいです。
暮しのファシズム
この一年間ほど人間が「暮らし」について考えたことはなかったと思う。住環境をよくすることが生きやすさにもろに反映される生活の中で、ちょっとでも便利にしようと思って暮らしグッズや仕事グッズを買ったりするわけですよ。でもそういう「よくする」行動をしていると、自分が望んでそれをしている気がしてしまうけれど、社会のツケを個人が払わされているという怒りを忘れてはいけないよなといつも思っていて、そんな怒りを呼び起こしてくれる本でした。
さてここからはややジャンル別で。
ビジネス:世界を見てきた投資のプロが新入社員にこっそり教えている驚くほどシンプルで一生使える投資の極意
金融資産についての話は「そうよね~」という感じだったんですが、人的資産とからめて書いてあるのがすごくわかりやすくて納得。アンリミに入ってます。
ティーンズラブ漫画:木更津くんの××が見たい(単行本版)
コンプレックス持ちのアラサー男女がエッチなことを介して惹かれ合うティーンズラブ漫画「木更津くんの××が見たい!」、2巻が出たんですが、ヒロインの仕事描写の本格的さに思わずエッチな気持ちが吹き飛びます(そのあとちゃんとエッチなシーンもあります) #今日の推し本https://t.co/I4HesNEsTg
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月5日
1巻はこちら。1巻の時点で「めっちゃいいやん…」となっていたんですが2巻で「めっっっちゃいいやん………」となります アラサーの仕事つらみスペシャルセットみたいなものをTLで見ることになるぞhttps://t.co/AzdCmz6M2q
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2021年3月5日
2巻、「えっ……マジで!?」という展開が待っていました。最近は女性漫画もTL漫画も「アラサーの働き方」描写がどんどんうまくなっていっているのですが、「木更津くん」はエッチ描写もちゃんと盛り込みながらアラサー女性の働き方をしっかり描くぞ!!という作者の魂を感じて素晴らしいです。
ティーンズラブ小説:ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない 魔女は愛弟子の熱い口づけでとける
最近は「ティーンズラブ小説もいいな…」とちまちま読んでいるのですが(ムーンライトノベルズ出身の作家さんがけっこう書いてる)、クレイン作品はどれもいいです。「ヤンデレ魔法使い~」は冒頭と中盤で男女の年齢が逆転する展開になっていて、「年上のお姉さんへの少年の恋心」から「大人の男の執着」まで1冊1ヒロイン1ヒーローで楽しめるという欲張りセットになっています!