アオヤギさんたら読まずに食べた

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TL(ティーンズラブ)となぜか働いてしまう局所的な倫理観について

 もともとエッチなコンテンツは好きだったのですが、2020年末から体調を崩したのをきっかけにTL(ティーンズラブ)にドハマリしました。また2021年の自分テーマは「名作を読む」なのですが、名作を読むのは体力を使うのです。傑作すぎると体力をどっと使うわけですが、TLでサンドイッチすることでどんどん読めるんですね(ベストバランス!)(?)

 質問箱でどんどんオススメをいただけたのもあり、短期間にいろいろな作品を読んでいったのですが、そうすると自分の好みの輪郭がよりはっきり見えてきます。

素直に楽しめなくなること

 作品が悪いわけではなく、あくまで受け手の私の問題なのですが、TLを読んでいてちょっと素直に楽しめなくなる展開がいくつかあるなと思いました。

・セックスシーンが職場や業務時間中に発生する

・社長と秘書、ご主人様とメイドなど、ヒーローとヒロインの間に雇用関係や上下関係があり、最初のセックスシーンに明確なOKがない(ヒロインが流されたり、酔っぱらっていたり、寝ている間を襲われたり、仕事の一部として性的なことを命じられたり)

・ヒロインの職業がWebライター

 ちょっとこの箇条書きの感じにピンとこない方も多そうなので追加すると、「ティーンズラブ」というジャンルはそのジャンル名からは現在やや離れており、メイン読者層はティーンズではなく(たぶんメインはアラサー)、登場人物もティーンズではなくアラサーが増え、お仕事ものの要素が増えてきています。

 なんらかの仕事をしているOLというのも王道なのですが、フレーバー的にも話の展開的にもヒーローやヒロインに明確に仕事の設定をしていることはけっこうあり、やや余談になりますが2018年ごろからヒーロー側に消防士や警察官のTLが増えてきています(これはヒーローの筋肉の魅力を説得力ある感じに描けるのと、仕事で命の危機が発生するドラマが作りやすいこと、ヒロインのピンチを救う展開を描きやすいというのもあると思います)。

 ただ自分でも不思議だなと思うのが、仕事の設定がはっきりすればするほど、「仕事中でのセックスシーン」が素直に読めなくなっていくんですね。業務時間中に職場の隅で…や、業務時間中に椅子の下で…や、営業の出先でラブホに……といった展開に、「仕事をして~!!!!」「こんなんバレたらクビか謹慎になってまうよ~!!」ってなっちゃうんですよ。変に現実に帰ってくるというか…。特に引き戻されてしまうのがWebライターで、取材先でエッチな目に合う…みたいなのは、あわんでくれ!!!と思ってしまうのです。

※一方で、漫画家と編集者みたいなもので、特に王道展開のひとつ「作家がエッチな展開を描くために編集やファンに体験を依頼する」のは全然気にならないので、そのあたりの判定はザルザルです。

 同時にヒーローとヒロインの上下関係もけっこう気になってしまい、社長命令でエッチなことをされる秘書や、編集者命令でエッチなことをさせられる漫画家、借金のかたにエッチなことをさせられるメイド、医師に無知をつけこまれエッチな診察を受けさせられる患者などは、「エッチだな~」という気持ちと「ムムー!」という気持ちが激突します。繰り返しますがそういった作品が悪いわけでは全然なく、私が読むときに心のどこかに葛藤を抱くという話です。

己のダブスタ

 …と、ここまで考えていて思うのは、自分はTLを読むときは頭のモードをわりと切り替えていて、「エッチなものを読むぞ~!(ワクワク)」というテンションでいるわけです。このテンションでいるときは「エッチであること」が最重要で、たとえばストーリーがハチャメチャだったりお決まりすぎたとしてもエッチであれば大丈夫です!!!というふうになったりもします。

 もっともそのテンションでいるときが男性向け成人同人誌を読んでいるときです。そしてこれは自分でもダブスタだと思うのですが、男性向けR18を読んでいるときは上記の3項目が全然気になりません。

 なんでだろ? と考えてみたのですが、まず大きいのが私が読んでいる男性向けR18は8割NTRジャンルであるということです。もうちょっと自分の気持ちに踏み込んでみると、TLでの職場セックスは「お互いをハッピーにさせる恋愛になるかもしれないのに、なぜそんな危ない橋を渡るのであろう」という気持ちがどこかしらで働いていて、一方NTRでの職場セックスは「寝取ろうとしている相手を堕落させる行為なのだから、当然職場で行われるだろう」と思っているのかもしれません。

 私は現代日本のエロ表現(特に同人カルチャー)は侮蔑と軽視と背徳感にあると思っており、「きれいでかわいい」からエロいのではなく、「きれいでかわいいあの子が(性的に乱れることで)みっともなくなる」からエロくなるのだと感じています。きれいはきたない、きたないはきれいというわけで(?)、FANZA系ではNTRが隆盛を誇っていますが侮蔑も軽視も背徳感も32ページで書けるという素晴らしい関係性テンプレだからだと思っています。

 この価値観の中では、職場セックスはやっちゃいけないことだからエロく、立場を利用にしたセックスもやっちゃいけないことだからエロい、業務中のセックスもやっちゃいけないことだからエロい、やっちゃいけないことをエロいことをやりたいがためにやってしまう女性キャラクターはみっともなくてエロい、という構図になります。私はけっこうこの価値観に浸かっているため、男性向けR18を読むときは「う~ん、エロい!」というテンションになります。

 TLを読んでいるときも、このエロコードに従って作品を読んでいます。が、わりと日常の倫理観がよみがえってきてしまい、「エロいな~」という気持ちと激突してしまうんですよね…。それをあえて言葉にすると、私は男性向けR18にはエロだけを、TLにはエロと恋愛を求めており、TLを読むときは恋愛ジャンルを愛好する私も同時に起立!気を付け!!礼!!!しているということなのかなと考えています。

誰かの萌えは誰かの萎え

 同人界隈では「誰かの萌えは誰かの萎え」といわれることが非常によくあります。それは一個人の中でも発生するんですね。Aジャンルでは萌えるシチュがBジャンルでは萎える。これが私の場合男性向けR18とTLで発生しているということなのでしょう。

 私が素直に楽しめないシチュエーションも、誰かのドンズバ萌えなことが絶対にありえるわけで、自戒として「このシチュエーションは地雷でした~」みたいな表現を安易にしないでおこう、と思っています。(もし言っていたら口がすべっているのですみません…)

 あとこの辺の萌え/萎えってけっこう月日によって変わりそうで、定年退職したら職場セックスものも「若くてヨシ!」ってなるかもしれん。

 質問箱ではいつもオススメTLをゆるぼしています。よろしくお願いします。