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「10~20代の電子書籍ユーザーを増やす」のは難しい?

「東京国際ブックフェア」に行ってきました。23日開催のセミナー「電子書籍、どうしたら読まれるの? ぶっちゃけ座談会」を聞いてきたのですが、その中の議題の1つ「どうすれば10~20代の電子書籍ユーザーが増えるのか?」というのにかなりけっこうウーンとなりました。
まず前提として、全体の電子書籍の利用率は約2割。2011年から年4%ずつくらいコンスタントに増加していますが、ここ数か月で見ると微増~横ばい状態にあります。
現在、電子書籍のメインユーザーは30~50代がボリュームゾーンで、10~20代はかなり弱い。
(補足しておくと、「マンガワン」を始めとする漫画アプリなどの登場で、10~20代のユーザーは増えてはいるんだけど、課金までに至っていない、もしくは、漫画アプリなどを「電子書籍」としてカウントしていないということのようです。同じくいわゆる「ケータイ小説」も調査によっては電子書籍に含まれていないことがあります)
出版社の悩みとしては「電子書籍、どうしたら読まれるの?」というよりは「電子書籍、どうしたら買われるの?」のほうがより正確かもしれない。
わりとセミナー内での意見も「まだ模索中」というものが多く(セミナーの内容の詳細はまた別のところでまとめます)、業界としては「10~20代(学生層)の課金者を増やすのは難しい……」というのが現時点の結論のようです。
では、なぜ10~20代の課金者を増やすのは難しいのか? 若者が「本離れ」をしているから? 若者が電子コンテンツにお金を払う価値を感じていないから? ……というよりもむしろ、手段と競合の問題なのではないかと思ったのでまとめます。

課金したくても課金できない

ここから自分語りになるんですけど、つい最近クレジットカードを作りました。学生の時もクレカをもっていたんですが諸事情(……)によりハサミで断裁しておりまして、正社員記念としてOLのたしなみルミネカードを作成しました。
もうめっちゃビックリしたんですけど、クレカって超便利じゃないですか?????めっちゃ買い物がしやすい。映画のチケットも買いやすい。ほしい本はポチり放題ですよ。来月の私、ファイト!って気合があればFGOのガチャだって回せます。
これまでどうやってAmazonで買い物をしていたかというと、コンビニで買えるAmazonギフトカードを買って読み込むか、代引きを使ってました。でもそうすると「あっ100円足りなくてこの漫画買えない」みたいな萎えインシデントも発生するわけで、そしてそのあと見返してみると「もういいか……」ってなってしまったりして。あとは超駆け出しフリーライターだったので「今月はどう考えても金がない」という状態になりやすかったです。
そこでクレカです。クレカに加え、定期収入があることにより、電子コンテンツ購入へのハードルが一気に下がりました。たとえばマガスペの「ドリームス」がやべえと噂になれば、これまではコンビニで立ち読みしていたのが、Kindleで買って読むようになったわけです。
こうした自分のムーブを考えるに、電子書籍を含む電子コンテンツ普及に欠かせないのが、「クレジットカード」「定期収入」なのではないか。
そこで10~20代です。
まず10代のクレカ保有率ですが、18歳未満はクレカを作れないのでかなり低いです。N数が少ない調査なのであまり参考にはなりませんが、約10~20%のもよう。
そして20代ですが、JCBが毎年調査レポートを出しています(http://www.global.jcb/ja/press/20160222150000.html)。全体保有率は84%ですが、男性20代は72.9%、女性20代は74.9%と、平均よりも10%以上下回ります。

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また、これは別調査なんですが、学生に絞るとクレジットカードの保有率は40%程度にとどまります。
このクレカ情報を見ると、電子書籍(というか電子コンテンツ)は、若年層を狙うよりも50~60代を狙っていったほうが、はるかに簡単に金になりそうな気がしますね。と考えるのは短絡的すぎるか?
クレカを持ってない層に向けては「キャリア支払い(まとめて支払いとかのやつ)」がおそらく有効なんでしょうが、10代だと親が制限をかけている場合が多いので、まあそこからたくさん取っていくのは無理でしょうな~。

お金がないので課金ができない

ではどれくらいクレカを使っているのか――というと、こちらも渋い数字。まず月平均の生活費を属性別でみると、全体が17.7万円なのに対して未婚20代は11.6万円。で、クレジットカードの利用額は、全体5.3万円に対して未婚20代は2.9万円。既婚であるか/年齢が上がるかで、生活費も利用額も上昇する傾向にあります。

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さらに、国税庁の民間給与実態統計調査(2015年版)のデータを足して考えてみます。
19歳以下 男性平均年収:157万円 女性平均年収:104万円 合計平均年収:130万円
20~24歳 男性平均年収:264万円 女性平均年収:231万円 合計平均年収:248万円
25~29歳 男性平均年収:378万円 女性平均年収:297万円 合計平均年収:344万円
こうしてみると20代後半の男女の年収差スゴイですね。それはいったんはおいておいて。
この辺の相関関係は簡単には言い切れないんですが、
・20代はクレジットカードを持っている人がほかの世代と比べて少ないので、クレジットカードの平均利用額が低くなる
・20代(特に前半)は年収が低いので、生活費にかけられるお金も少なく、クレジットカードの平均利用額も低くなる
(※たとえば20代前半の女性が全体平均の月17.7万円で生活すると、年212万になり、ちょっとしたトラブルがあると生活が積むので、月の出費を抑える必要が出てきます)
・(ここからは仮説)女性の課金額が低いといわれているが、この辺に理由があるのでは?
……などがいえるんじゃないでしょうか。

ただしこういうアンケートもあります。これはアプリ課金に関するアンケート。http://www.global.jcb/ja/press/20160222150000.html

「アプリに課金したことがある」層と年収・職業との関連がまとめてあるのですが、「課金した事がある」のトップ層は「年収300万円台」(57.5%)。次いで「年収100万円台」(55.7%)なんですよね。そしてこのアンケートでは年収400万円台以降はアプリ課金の経験が下がっていく傾向がみえます。また、職業別だと「契約社員・派遣社員」「自営業」が若干高めで、このアンケートだけ見てると「年収300万円台の契約・派遣社員が有料コンテンツ課金をしている」という像も見えてくる可能性があるわけで(※どれだけ重なっているかはわからないので正確な表現ではない)、これちょっと難しいです。

あとは競合の問題?

ここはちょっと軽めで。
あとは、電子書籍を専用端末ではなくスマートフォン・タブレットなどで見ている層が多いことから、課金額を奪い合う相手が「ゲーム」「音楽」「映画」になることが言えると思います。
huluに払っているお金を、ガチャを回すお金を、パルマのハルトくんと面会延長をするお金を、ユーザーが電子書籍に割くか? と言われると、ちょっと難しいかも……。
本ってほかの有料コンテンツと比べて単価が一瞬高く見える(LINEスタンプ1個は200円、本は400円以上)なので、勢いで買うには不利かもしれませんね。少女漫画やエロ漫画の読み切りを分割して100円で配信……ということをやっている電子書籍ストアがありますが、案外そういうのが有効なのかもしれません。

 

いろいろ考えましたが、個人的な結論は、「10代に電子書籍課金ユーザーを増やすのはほぼ無理。ただ無料読者としては増やせる。20代はきっとなにか対策はあるけどクレカ持ち率と年収が上がらないと厳しめ」です。
それよりも50~60代の電子書籍ユーザーをどう増やしていくかを考えたほうが短期的なお金にはなりそうです。ただそうすると30年後にもっと大変になる気もします。

参考:
http://www.global.jcb/ja/press/20160222150000.html
http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35070986/
http://lab.oceanize.co.jp/creditcard-uni/
https://marketing-rc.com/report/report-2015monthly-20160309.html
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1503/11/news102.html