アオヤギさんたら読まずに食べた

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「むこうぶち」6巻全話レビュー 生臭坊主・雅がいい味を出してる

むこうぶちに出てくるキャラは「カイにボコボコにされて破滅する」「カイにボコボコにされて準レギュラーになる」「カイにボコボコにされて麻雀から身を引く」のどれかになることが多いのですが、6巻に登場する生臭坊主の雅は「ボコボコにされて麻雀から身を引くけど懲りない」というなかなか珍しいヤツです。私はくだらね~下ネタを言う憎めないキャラが好きになっちゃうところがあるので雅はけっこう好き。

 

 

41話 花道・2

【打ってる人】木下(ベテラン投手)、風間(若手エース投手)、カイ、梅原(投手仲間でダマテン派)

【一言で言うと】カイ、麻雀で野球を教える

鳴いてテンパイを崩したカイの打牌に風間が動く。風間は知るよしもなかったが、カイが鳴いていなければ九連をテンパイしていたツモ順だったのだ。宣言通りカイに翻弄される卓。梅原、風間、そしてカイがリーチをかけ、一発目の切り牌に悩む木下。オリを選択することもできたが、リーチ後の最初のツモでテンパイしたことから、昔の自分の野球のようなド本命を打つ。その牌は3人の当たり牌だったが、三家和は流局というキメによって「直球で勝負したからこそ救われる」という状況になった。オーラス、カイはリー棒3本分を回収してトップに。「お望み通り翻弄しました」と告げるのだった。

そして場面は前話の球場に戻る。木下はノーヒットノーラン記録が継続中だが、風間と交代。風間は直球勝負ではなく変化球で勝利をおさめる。風間にエースの継承を果たせたと実感した木下は、「よい花道だった」と引退を決める。

【感想】2話と短いエピソードなんですが、かなり人生っぽくていいエピソードです。

42話 運

【打ってる人】上野の秀、カイ、おじさん2人

【一言で言うと】前回(38話)で見逃された上野の秀、ドボンする

前巻(38話)に登場した上野の秀が再登場。秀は倉庫に侵入して盗みを働き、盗んだ代物を卸して稼いでいた。秀が得意なのは赤入り麻雀。赤の出てくるタイミングや赤周りの切り順から相手の手を読む。秀が打っているところにカイが現れる。カイは赤5pを赤5黒5p4pとあるところでわざわざ2順目に赤5pを切り、秀から3-6pを釣り出す。カイは赤使いをハメる腕を持っていたのだ。カイは秀をラスにし続ける。運が尽きた秀が雀荘を出ると、警察が待っていた。“本業”での運のほうも秀は使い果たしてしまったようだ。

【感想】赤切って赤周りを釣り出すの、石橋プロか?と思いましたし、バッシーはむこうぶち愛読者なのかもしれない。

43話 邪鬼・1

【打ってる人】安永、雅、おじさん

【一言で言うと】キャラが濃い生臭おじさん雅、高レートに関心を持つ

高級クラブに通っては女を口説き、金をちらつかせて関係を結び、口八丁でむしろ金をしぼりとる生臭坊主・雅。雅は麻雀も癖が強く、リーチ宣言がお経、「男は読経!」ツモ、法力で赤とドラが来る……と一風変わった雀風。マンション麻雀で同卓した安永は走られてしまい、2着続きとなる。雅はさらにレートの高い部屋(カイの姿も見える)に興味を持つ。

【感想】雅、メッチャイキイキしていて好き。

44話 邪鬼・2

【打ってる人】安永、カイ、雅、おじさん

【一言で言うと】雅の麻雀のヒミツは……?

東京タワーが見えるホテルで、ホステスとよろしくやっている雅。「東京タワーより僕のタワーはどうだい?」などと言いつつ、巨根と絶倫と口のうまさでホステスをたらしこみ、割のいい移籍をちらつかせて金を出させる。ホステスからだましとった金を元手に、高レートの部屋にやってくる雅。安永は雅殺しに動き、先手先手で上がってラスを引かせる。持参した金を空にしてしまった雅にカイは500万を貸し、続行させる。

【感想】冒頭のすげ~アホっぽい雅のエッチなシーン、先生が楽しんで描いてらっしゃる感じがしてよいです。

45話 邪鬼・3

【打ってる人】安永、カイ、雅、おじさん

【一言で言うと】安永、雅のガン牌の秘密を探る

金を借りた直後の局、雅の調子がいい。一見不合理な待ちを見て、安永は雅がガン牌(牌に目印をつけるなどで、わかるようにすること)を行っていると気づくが、その秘密をつかめない。一方カイは雅のガン牌の秘密を完全に見抜いたようで、それを生かしたアガリで雅を負かす。金を取り戻すため、雅はカイと翌日再戦すると約束して去る。安永は雅のガン牌の秘密をひとり考えるが、朝日の中で気づく。

46話 邪鬼・4

【打ってる人】安永、カイ、雅、おじさん

【一言で言うと】雅、カイにボコボコにされるも懲りない

雅のガン牌の秘密は単純なものだった。牌の作りが甘いのか、赤牌だけがわずかに厚い。また、2sも側面にゆがみがある。雅がわかるのは赤牌の位置と2sだけで、お経によるリーチ宣言は時間稼ぎで牌を凝視しているのだった! 翌日の再戦で安永は同様にガン牌を生かしたアガリや鳴きを行うが、かえって麻雀が乱れてラスになってしまう。カイはそんな安永に瞳で「静かにひそめ」と語りかけてくる。カイは流れをものにし、雅を連続ラスに沈める。

新たに工面した金も全て溶かしてしまった雅のところに、ホステスやもうけ話を持ち込んだ業者などが続々とやってくる。息子のしりぬぐいをするために、父である住職がやってきて金を返済、カイを見て「この御仁は人にあらず!」と雅にはとうてい勝てない相手だと語る。後日、雀荘に姿を見せなくなった雅。修行でもしているだろうかと語る麻雀仲間に、安永は「雅は“天邪鬼(あまのじゃく)”」だから懲りはしないだろうと話す。

【感想】メチャクチャでかい額を負けているしかなりあくどい男なのですが、実はあんまり痛い目にあっていない気がする。こいつはバブルを生き抜いたと思う。

47話 あぶくぜに・1

【打ってる人】相沢(土地が狙われているラーメン屋)、小川(麻雀友達の酒屋)、金森・三宅(不動産を狙う男たち)

【一言で言うと】接待麻雀からの殺し麻雀に乗せられるラーメン屋

土地持ちの夫婦に降ってわいた前渡金の2000万円。自己資金なしでマンションを建てるという話だったが、不動産屋はこの2000万円を夫婦が使い果たし、土地を手放すことを狙っていた。財布のひもが固い夫婦だが、夫の唯一の賭け事趣味が麻雀。低レートで楽しく遊んでいたところに、不動産屋の金森と三宅が“接待麻雀”に誘う。相沢と小川は接待麻雀によって勝たせられ、レートがふだんの10倍であることを局が終わってから教えられる。小川は驚いて帰るが、相沢は欲を見て居残る。1欠けの卓に入ることとなったのはカイだった。

【感想】土地をもっているとえらい!

48話 あぶくぜに・2

【打ってる人】相沢、金森、三宅、カイ

【一言で言うと】接待麻雀モード終了

金森は実は裏プロで、接待麻雀で相手を太らせてからビンタの吊り上げを提案しつぶすやり口だった。カイが入って最初の局、みんなで相沢に差し込む“接待麻雀モード”。カイも的確に差し込み、吊り上げビンタを提案する。金森は接待麻雀モードを終了し、ガチモードへ。鳴きのときの理牌を工夫することで相手に振り込ませる方法をとる。金森の狙い通りの放銃をしたのはカイ。カイは不敵に笑うのだった。

 

 

「むこうぶち」5巻全話レビュー “いけすかないおじさん”のギャップ萌えを作る方法

むこうぶち」の“1ページでおじさんの魅力を伝える”テクニックが痛感できる巻です。

 

33話 女衒打ち・2

【打ってる人】深見とホステスさん/深見、カイ、銀座のママ、おじさん

【一言で言うと】深見の麻雀スキル「場をコントロールする」

ホステス3人と麻雀を打つ深見。深見は場を見て、誰に勝たせるべきか、誰の手がよさそうかをコントロールできる麻雀の腕があった。そのスキルで兄貴分の峰に買われ、ホストをクビにされていたところをスカウトとして拾われたのだ。峰は売れっ子ホステスを引き抜くため、彼女の負け分を取り返す代打ちを深見に任せる。これで峰に気に入られて一人前に――といきり立つ深見は、彼と体の関係をもつさえないホステス・かなこを鬱陶しがる。かなこは「ウソつきで自分勝手だけど優しい」「でも優しすぎはお人好しと同じよ……」と心中で思うのだった。

代打ちすることになった卓は、深見、カイ、銀座のママ、おじさん。深見はカイの実力を感じ、当初は気圧されるが、次々に振り込むのを見て「もうビビらない」と(かりそめの)自信を持つ。

【感想】カイとすれ違った深見がカイがノーブランドであること、自分はブランドでキメキメであることをちょっと恥じるシーンがあり、かわいいやつだな…となります。

34話 女衒打ち・3

【打ってる人】深見、カイ、銀座のママ、おじさん

【一言で言うと】深見、カイに敗北してスカウトをクビに

カイの振り込み(差し込み)によって小場の展開が続く。オーラス、ダブリー一発ツモで逆転するカイ。カイは他家の安目に差し込んだり、深見が他家に鳴かせるのを見抜いた待ちにしていたりと、深見たちは手も足も出ない。完全に支配された場を見て、代打ちを頼んでいたホステスは白けて帰ってしまい、引き抜きの話は白紙に。峰は深見をクビにし、カイとの対決の負け分を払えと冷たく通告する。失意の深見のもとにやってきたのはかなこ。ホステスで稼いだ金を深見に渡すと言うかなこを深見はいとしく思い、抱きしめるのだった。

【感想】ダブリー一発ツモはもはや麻雀のスキルというか…。深見がカイに勝てなかったことでメッチャ怒られるんですけど、やや理不尽な気もします。峰さんが打ってても勝てなかったよたぶん。

35話 蛭・1

【打ってる人】深沼(トイチの高利貸し)、安永、椎名と山本(深沼から金を借りてる2人)

【一言で言うと】安永、深沼をギャフンと言わせるためにカイを呼びこむ

トイチの高利貸しの深沼は、金を貸した客を麻雀に誘っては借金を増やさせる蛭(ひる)のような男。いつも2人客を連れていっては、マスターを同卓させる。何度も負かされているのに卓に入ってしまうマスターを見かねた奥さんが、深沼を追い出すために常連の安永に半乗り(負けも勝ちも割る)を頼み込む。深沼の麻雀は先ヅモ先切り当たり前。安永は居心地悪く打たされ、かつ客2人は深沼から当たらないため、ラスを引かされてしまう。安永は“殺し専門”のような男・カイを呼び寄せ、深沼にぶつけることを提案する。

【感想】バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!!! 先ヅモ先切りは普通に打ってるとほぼ見かけないですが、おじいちゃん(教授とか…)と打つとまだやる人がいてけっこうイライラします。

36話 蛭・2

【打ってる人】カイ、深沼、椎名と山本

【一言で言うと】深沼のいやらしい麻雀に対抗するカイ

安永の呼び水に乗りやってくるカイ。深沼、深沼の客2人、カイで卓が立つ。深沼は「先ヅモをしなくなればテンパイが近い/鳴きたいだろう」「先ヅモしてるからまだテンパイじゃないだろう」といった予想を逆手にとる老獪な麻雀を打つ。カイは深沼ではなく、客2人に差し込むかのように振り込んでいく。

【感想】先ヅモ先切りを生かした腕!!!と言われるとマナ悪の上に成り立つ腕とは!!!とおもてしまうな。

37話 蛭・3

【打ってる人】カイ、深沼、椎名と山本

【一言で言うと】客2人、カイの思惑にいいように乗ってしまう

カイの差し込みにより深沼との差が開いたことで、客2人はそれぞれトップを狙い始めるようになっていた。深沼は人を呼び付けカイの後ろ見(壁)をさせ、手を教えさせるが、ツモってしまえば関係のない話。客2人は深沼からもアガるようになり、怒った深沼は2人を追い返し、上野の雀ゴロ・秀を呼びつける。これまで傍観者だった安永は、急きょ卓に座らされることになった。

38話 蛭・4

【打ってる人】カイ、安永、深沼、秀

【一言で言うと】カイ、安永をサポート

半ばコンビ打ちの深沼と秀に挟まれ苦境に立つ安永。カイは意味なし鳴きをすることで、ノッている秀のツモを安永にパスする。安永はカイの意図を察し、逆転のチートイドラドラを仕上げるのだった。

【感想】ここで挟まれるのがマスターと深沼のエピソード。マスターが何度負けても卓に入ってしまうのは、おさななじみである深沼とある日再会し、金を借りていたから。妻の病気の手術代を深沼から工面していたのだ。しかし深沼はマスターに対しては高利ではなく、法定金利で無担保で貸していた……と、こういうさらっとしたエピソードで「このおっさん、実はいいところもあるのでは…?」と思わせるのがむこうぶちのキャラ描写のたくみさ。このあと100回くらい言いますけどこんなにおじさんの顔のバラエティを探求してる漫画は他にないですよ。あと安永がチートイ選択ミスってたらカイがブチ切れただろうな…と思うと趣深いです。

39話 蛭・5

【打ってる人】カイ、安永、深沼、秀

【一言で言うと】カイ、深沼を“丸裸”にする

カイはノーテンリーチで深沼をあえて動かし、深沼の運を枯らす。カイのえじきになった深沼は負けが続き、狭心症の発作を起こして倒れる。お開きになる麻雀。深沼は体を案じてくれるマスターに、病を得て里心がついたが帰る場所がないと漏らす。深沼はマスターの雀荘で打つことで、故郷にいたときの自分を思い返していたのかもしれない……マスターは「また来な」とかたりかけるのであった。

【感想】ここのマスターの描写も「深沼の寂しさをわかっていて受け止めていた」感があってよいです。みんな大好きおじさんの悲哀だよ。

40話 花道・1

【打ってる人】木下、風間、カイ、野球選手

【一言で言うと】カイ、野球選手が開催するおうち麻雀になぜか出現

ベテランプロ野球ピッチャーであり、ケガから復帰したての木下は、マウンドに立っていた。7回戦満塁の大ピンチに、かわし手ではなく直球勝負を選択。その勝負は三重殺(トリプルプレー)となった。ベンチに戻った木下は、勢いづいている若手のエース・風間に「勝負に出たから勝てた」と呟かれる。ふたりの野球観は、“あの夜”を越えて大きく変化したのだった――3日前の夜のこと。木下は家にチームの選手を招き、恒例の麻雀大会を行っていた。風間はロートルである木下のことをやや下に見ており、周囲はいらだっている。立った卓は、木下、風間、チームの仲間、そして(なぜか)カイ。彼らの雀風と野球観はどこか重なっており、風間の麻雀は若くて速くて勢いがある。木下の麻雀は巧みではあるが風間には追いつけない。麻雀と野球を重ねて会話をする選手たちに、カイは「では自分が…翻弄しますがいいですね?」と口をはさむ。そう宣言した直後の局、順調に手を進めるカイだったが、謎のテンパイ崩し。見物者は驚愕する。

【感想】野球選手の家で開催する麻雀卓になぜかしれっといるカイ、思わず笑ってしまった。こんな怪しいやつを家に入れるな。しかしそういうおおらかさが昭和にはあったのかもしれません…。

 

 

「むこうぶち」4巻全話レビュー 実質ウテナ黒薔薇編の傑作エピソード「付け馬」

「付け馬」が大変いいです。

 

 

25話 荒野・3

【打ってる人】江崎、カイ、劉、乾

【一言で言うと】江崎、かりそめのトップ

カイの実力を見切ったと考えた江崎は、高レートマンション麻雀に“ラス候補”としてカイを連れていく。そこにいたのは中華系の“金満老人”劉と乾だった。「カイは手なりで打つ」と見抜いた(つもりの)江崎はカイをラスにする。

26話 荒野・4

【打ってる人】江崎、カイ、劉、乾

【一言で言うと】江崎、カイに翻弄される

劉と乾は100万の吊り上げビンタを提案し、全員がそれに乗る。江崎の読みをミスリードさせる捨て牌を作り、カイは江崎をラスにする。

27話 荒野・5

【打ってる人】江崎、カイ、劉、乾

【一言で言うと】江崎、ハメられる

江崎とカイの様子を見て、中国語でニヤニヤと会話をし始める劉・乾・マンションのマスター。のちに明らかになるが老人たちは孫子を引用しながらカイの戦いぶりを評していたのだった。オーラスでトビやラスを引かされ続ける江崎。江崎は軍資金の2500万円をすべて溶かし、帰りたいと言い出すものの、残り3人は続行を宣言。劉は「ここにいるのは弱者の一生に一度の不様が見たいだけの人でなしなんです」と笑うのだった。

【感想】

途中劉と乾たちがしゃべっている中国語的なテキストは、のちに種明かしされますが孫子老子(おもに孫子)です。訳文がないやつを調べました。これはもちろん全てカイの戦い方についてコメントしています。

鷙鳥之撃至於毀折者節也→猛禽(鷙鳥/しちょう)は獲物に襲い掛かり、一撃で骨を砕き骨を折ってしまう。それは一瞬に力を集中するからである。
不可勝在己可勝在敵→誰にも負けない態勢を整えるのは自分(見方)のことだが、だれもが勝てる態勢とは敵側のことである。
微乎微乎至於無形 神乎神乎至於無聲→なんと微妙なことであろうか、形がないように見える。なんと神妙なことであろうか、音がなくなる。
善攻者敵不知其所守 善守者敵不知其所攻→攻撃の巧みな者に対しては、敵はどこを守っていいのかわからなくなる。またどこを攻めるべきかわからなくなる。

江崎はここで負け切ることで新たな人生を歩み始めます。あと劉ものちほど出てくる。

28話 付け馬・1

【打ってる人】浅井/郷原

【一言で言うと】郷原、代打ちをする

「付け馬」――借金を回収するまで債権者を追い回す取り立てを行う郷原は、今日もサラリーマンの浅井の付け馬をやっていた。浅井は賭場にのめりこんでいるが、麻雀の腕は悪く、負けは膨らむばかり。郷原は浅井の代打ちとなり、勝ち分を山分けすることを提案する。高レート雀荘に向かった郷原は浅井に代わり初戦トップ。幸先のいいスタートを切ったコンビだったが、1欠けで代わりに卓に座ったのはカイだった。

29話 付け馬・2

【打ってる人】郷原、カイ、おじさん2人

【一言で言うと】郷原、カイの誘惑を断ち切り引き返す

郷原が代打ちを提案したのはワケがあった。長く連れ添った妻に子どもができ、金を必要としていたのだ。「待ってろよベイビー! 稼ぎまくってでけえ産院で産んでやっからな!」と気合を入れる郷原。しかしカイに上がられ続ける展開が続く。郷原にオーラス逆転が見える手が入ったが、悩んだ末に3着を確定させる1300点の手を選ぶ。もし欲を見て役満を狙っていれば、カイのテンパイに振り込んでラス落ちだった。カイは「行きますか…陽の当たる側で…」と笑うのだった。逃げ帰った郷原と浅井は、バクチ打ちとしての己の器を知り、まっとうに生きていくことを選ぶ。郷原は田舎に帰って浅井の付け馬ではなくなるので、もう無茶な金の借り方をするなと浅井を諭す。長く取り立てる側と取り立てられる側だった2人には不思議な絆も生まれていたが、2人は朝焼けの中別れるのだった。

【感想】これはメチャクチャ名エピソード。大好きなアニメ「少女革命ウテナ」黒薔薇編に近いエピソードがあります。黒薔薇編は「サブキャラクター」とされるキャラクターたちが自分の暗い想いと欲望によって「黒薔薇のデュエリスト」として覚醒する(そして1話でウテナに倒される)という展開が続くのですが、「今は亡き王国の歌」というエピソードだけは、「君は本当にいい人だね。だから、君の進むべき道はここにはない。帰りたまえ。ここは君のような人間の来るところではない」と告げられ黒薔薇のデュエリストにならずに話が終わります。「付け馬」は1話で「この郷原って人、悪い人じゃないな…」と思わせ、2話で「子どもも生まれるの! 不幸にならないでほしいな…」と思ったところで、「欲を見ない」という選択をしたことでカイから逃れることができるという構成になっています。この場合カイが御影草時で、「君の進むべき道はここにはない」とお告げをしていたのでしょうね。

30話 無尽・1

【打ってる人】佐野、カイ

【一言で言うと】佐野、絶体絶命からさらに絶体絶命へ

かつては雀ゴロ、今は婿入りして名ばかりの工場社長をやっている佐野は、最近麻雀の負けが込んできている。金の工面ができなくなってきて、「無尽」(口数を定めて加入者を集め、定期に一定額の掛け金を掛けさせ、一口ごとに抽籤または入札によって金品を給付するもの)に頼ることに。200万の無尽を99万で落札するという余裕のない佐野は、その金を軍資金に高レート雀荘へ。「負けられない」という思いから狭い麻雀を打つ。カイは佐野に御無礼を連発し、軍資金を全て奪い取る。そして「まだ先がある」と佐野に300万を貸すことを提案し、続行させる。

31話 無尽・2

【打ってる人】佐野、カイ

【一言で言うと】佐野、破滅

カイから借りた300万分もすぐに負けてしまった佐野。このままだと工場の従業員に給料も払えない。300万の借金をカイに返し、麻雀で買って取り戻すために、手形を売ったり無尽の親(開催者)になって金を集めたりと工面する。その金でカイと再戦するも、もちろん負け続け、最後は借金を己の死亡保険金(自殺)で返すことを選択させられる。佐野の死後、彼の戦いを見ていた知人2人は、どこで佐野はやめるべきだったかを振り返る。

【感想】この前の「付け馬」と対照的なエピソード。カイは引き返して光の当たる側で生きられる人間は深追いはせず、もう命の値段が尽きている(戻ってこれない)人間に対しては命を奪うまで追い詰めるというバクチの妖精さん

32話 女衒打ち

【打ってる人】深見

【一言で言うと】深見、カイに遭遇する

スカウト見習いの深見は、憧れている先輩の言葉に従って、ホステスの負け分を取り戻す代打ちをやっていた。手堅いスキルで勝つ深見だが、雀荘でカイとすれ違い、カイのもつオーラに圧倒される。