アオヤギさんたら読まずに食べた

暮らし、エンタメ、金、自己啓発、ときどき旅

「むこうぶち」5巻全話レビュー “いけすかないおじさん”のギャップ萌えを作る方法

むこうぶち」の“1ページでおじさんの魅力を伝える”テクニックが痛感できる巻です。

 

33話 女衒打ち・2

【打ってる人】深見とホステスさん/深見、カイ、銀座のママ、おじさん

【一言で言うと】深見の麻雀スキル「場をコントロールする」

ホステス3人と麻雀を打つ深見。深見は場を見て、誰に勝たせるべきか、誰の手がよさそうかをコントロールできる麻雀の腕があった。そのスキルで兄貴分の峰に買われ、ホストをクビにされていたところをスカウトとして拾われたのだ。峰は売れっ子ホステスを引き抜くため、彼女の負け分を取り返す代打ちを深見に任せる。これで峰に気に入られて一人前に――といきり立つ深見は、彼と体の関係をもつさえないホステス・かなこを鬱陶しがる。かなこは「ウソつきで自分勝手だけど優しい」「でも優しすぎはお人好しと同じよ……」と心中で思うのだった。

代打ちすることになった卓は、深見、カイ、銀座のママ、おじさん。深見はカイの実力を感じ、当初は気圧されるが、次々に振り込むのを見て「もうビビらない」と(かりそめの)自信を持つ。

【感想】カイとすれ違った深見がカイがノーブランドであること、自分はブランドでキメキメであることをちょっと恥じるシーンがあり、かわいいやつだな…となります。

34話 女衒打ち・3

【打ってる人】深見、カイ、銀座のママ、おじさん

【一言で言うと】深見、カイに敗北してスカウトをクビに

カイの振り込み(差し込み)によって小場の展開が続く。オーラス、ダブリー一発ツモで逆転するカイ。カイは他家の安目に差し込んだり、深見が他家に鳴かせるのを見抜いた待ちにしていたりと、深見たちは手も足も出ない。完全に支配された場を見て、代打ちを頼んでいたホステスは白けて帰ってしまい、引き抜きの話は白紙に。峰は深見をクビにし、カイとの対決の負け分を払えと冷たく通告する。失意の深見のもとにやってきたのはかなこ。ホステスで稼いだ金を深見に渡すと言うかなこを深見はいとしく思い、抱きしめるのだった。

【感想】ダブリー一発ツモはもはや麻雀のスキルというか…。深見がカイに勝てなかったことでメッチャ怒られるんですけど、やや理不尽な気もします。峰さんが打ってても勝てなかったよたぶん。

35話 蛭・1

【打ってる人】深沼(トイチの高利貸し)、安永、椎名と山本(深沼から金を借りてる2人)

【一言で言うと】安永、深沼をギャフンと言わせるためにカイを呼びこむ

トイチの高利貸しの深沼は、金を貸した客を麻雀に誘っては借金を増やさせる蛭(ひる)のような男。いつも2人客を連れていっては、マスターを同卓させる。何度も負かされているのに卓に入ってしまうマスターを見かねた奥さんが、深沼を追い出すために常連の安永に半乗り(負けも勝ちも割る)を頼み込む。深沼の麻雀は先ヅモ先切り当たり前。安永は居心地悪く打たされ、かつ客2人は深沼から当たらないため、ラスを引かされてしまう。安永は“殺し専門”のような男・カイを呼び寄せ、深沼にぶつけることを提案する。

【感想】バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!!! 先ヅモ先切りは普通に打ってるとほぼ見かけないですが、おじいちゃん(教授とか…)と打つとまだやる人がいてけっこうイライラします。

36話 蛭・2

【打ってる人】カイ、深沼、椎名と山本

【一言で言うと】深沼のいやらしい麻雀に対抗するカイ

安永の呼び水に乗りやってくるカイ。深沼、深沼の客2人、カイで卓が立つ。深沼は「先ヅモをしなくなればテンパイが近い/鳴きたいだろう」「先ヅモしてるからまだテンパイじゃないだろう」といった予想を逆手にとる老獪な麻雀を打つ。カイは深沼ではなく、客2人に差し込むかのように振り込んでいく。

【感想】先ヅモ先切りを生かした腕!!!と言われるとマナ悪の上に成り立つ腕とは!!!とおもてしまうな。

37話 蛭・3

【打ってる人】カイ、深沼、椎名と山本

【一言で言うと】客2人、カイの思惑にいいように乗ってしまう

カイの差し込みにより深沼との差が開いたことで、客2人はそれぞれトップを狙い始めるようになっていた。深沼は人を呼び付けカイの後ろ見(壁)をさせ、手を教えさせるが、ツモってしまえば関係のない話。客2人は深沼からもアガるようになり、怒った深沼は2人を追い返し、上野の雀ゴロ・秀を呼びつける。これまで傍観者だった安永は、急きょ卓に座らされることになった。

38話 蛭・4

【打ってる人】カイ、安永、深沼、秀

【一言で言うと】カイ、安永をサポート

半ばコンビ打ちの深沼と秀に挟まれ苦境に立つ安永。カイは意味なし鳴きをすることで、ノッている秀のツモを安永にパスする。安永はカイの意図を察し、逆転のチートイドラドラを仕上げるのだった。

【感想】ここで挟まれるのがマスターと深沼のエピソード。マスターが何度負けても卓に入ってしまうのは、おさななじみである深沼とある日再会し、金を借りていたから。妻の病気の手術代を深沼から工面していたのだ。しかし深沼はマスターに対しては高利ではなく、法定金利で無担保で貸していた……と、こういうさらっとしたエピソードで「このおっさん、実はいいところもあるのでは…?」と思わせるのがむこうぶちのキャラ描写のたくみさ。このあと100回くらい言いますけどこんなにおじさんの顔のバラエティを探求してる漫画は他にないですよ。あと安永がチートイ選択ミスってたらカイがブチ切れただろうな…と思うと趣深いです。

39話 蛭・5

【打ってる人】カイ、安永、深沼、秀

【一言で言うと】カイ、深沼を“丸裸”にする

カイはノーテンリーチで深沼をあえて動かし、深沼の運を枯らす。カイのえじきになった深沼は負けが続き、狭心症の発作を起こして倒れる。お開きになる麻雀。深沼は体を案じてくれるマスターに、病を得て里心がついたが帰る場所がないと漏らす。深沼はマスターの雀荘で打つことで、故郷にいたときの自分を思い返していたのかもしれない……マスターは「また来な」とかたりかけるのであった。

【感想】ここのマスターの描写も「深沼の寂しさをわかっていて受け止めていた」感があってよいです。みんな大好きおじさんの悲哀だよ。

40話 花道・1

【打ってる人】木下、風間、カイ、野球選手

【一言で言うと】カイ、野球選手が開催するおうち麻雀になぜか出現

ベテランプロ野球ピッチャーであり、ケガから復帰したての木下は、マウンドに立っていた。7回戦満塁の大ピンチに、かわし手ではなく直球勝負を選択。その勝負は三重殺(トリプルプレー)となった。ベンチに戻った木下は、勢いづいている若手のエース・風間に「勝負に出たから勝てた」と呟かれる。ふたりの野球観は、“あの夜”を越えて大きく変化したのだった――3日前の夜のこと。木下は家にチームの選手を招き、恒例の麻雀大会を行っていた。風間はロートルである木下のことをやや下に見ており、周囲はいらだっている。立った卓は、木下、風間、チームの仲間、そして(なぜか)カイ。彼らの雀風と野球観はどこか重なっており、風間の麻雀は若くて速くて勢いがある。木下の麻雀は巧みではあるが風間には追いつけない。麻雀と野球を重ねて会話をする選手たちに、カイは「では自分が…翻弄しますがいいですね?」と口をはさむ。そう宣言した直後の局、順調に手を進めるカイだったが、謎のテンパイ崩し。見物者は驚愕する。

【感想】野球選手の家で開催する麻雀卓になぜかしれっといるカイ、思わず笑ってしまった。こんな怪しいやつを家に入れるな。しかしそういうおおらかさが昭和にはあったのかもしれません…。