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勝部元気さんの「学校の制服ってもう廃止にしませんか?」について

勝部元気さんがツイッターで「学校の制服を廃止したほうがいい」という旨を発言している。トゥギャッタ―にもまとめている。

togetter.com

勝部さんは以下の理由で、学校の制服を廃止にしたほうがいいと主張している。

1.制服の存在は痴漢・盗撮などの性犯罪や、援助交際・JKビジネスにつながっている。

2.制服は高すぎる。既得権益の巣窟。GUやしまむらで買いそろえれば安くすむ。子育て費用の節約になる。

大きく分けてこの2つ。さらに派生するとトランスジェンダーなどの制服選択の話や学校側の管理の問題も出てくるだろうが、勝部さんはこの2点を強調している。

 

この2つのうち、1の理由についてはまだ理解ができる。痴漢や盗撮などの性犯罪’(特に痴漢)は、制服を着ている女子をターゲットにされることが多い。アダルトコンテンツでは「制服」は性的なモチーフとして使われるので、そういったイメージが制服に付加されやすいという現状はある。

しかしそれは(勝部さんもじゅうぶんにわかっているとおり)制服の問題ではない。特に痴漢問題は、制服を廃止する前に、監視カメラの設置などを先に進めるべきではないか。制服じゃなくても痴漢はされるものだ。

 

ただし2つ目は、勝部さんは大きく誤解をしている気がする。勝部さん自身あとで「金銭面に関しては、人による」と訂正しているけれど、なんというか学校=既得権益という構図を強く持ち過ぎなのではないかと推測している。

学校の制服が高すぎる、GUやしまむらで10着買った方が安いと勝部さんは言う。本当だろうか?

男子学生服価格|年次統計

これは総務省統計局のデータをグラフにしたもの。50年代からの男子学生服(ブレザーや学ランなどの上着+ズボンといった上下セット価格)の値段の推移である。

50年代から比べると物価は上昇しているので、制服の価格はどんどん上昇しているように見える。しかし物価を現在の基準にあわせて換算すると、50年代からいままで3万円程度で推移していることがわかる。ここに数枚、Yシャツなどが加わる。

そもそも1年に服は10着以上必要になる。平日毎日着るなら、最低の最低でも春夏で合わせて10着、秋冬で合わせて10着くらいは必要だろう(実際はもっと必要だと思う)。その金額を考えると、さすがに「制服より私服のほうが安い」とは言い切れない。

比較対象になるかなと思い、毎日私服でいかなければいけない小学生の服飾費をちょっぴり調べてみた。公的な平均は見つからなかったが、小町によるとひとりあたり1年間で5万~15万。安くても1シーズン1万はほぼ確実にかかっている。

 

勝部さんは制服の値段が「高止まりしている」とも主張している。確かに、ファストファッションが生まれて、服の値段は一気に下がったが、制服は下がらないでいる、そこが「既得権益」に見えるということなのだろう。ただそれも理由があってのもので、既得権益とは少し違うのではないか。

学生服製造業(衣類)|フィデリ・業種ナビ

業界情報サイトによると、学生服製造業はこのような業界らしい。

 従業員10人未満の企業が全体の7割弱を占め、中小零細企業が多い。

 これまで大量生産が可能な製品が少なく、また納期などの問題があることから海外生産が困難だったため、低価格の海外製品と競合することが稀で、カジュアルウエアなど他の衣料品と異なり、価格競争とは無縁といって良かった。しかし従来のコスト削減が限界に近づき、海外生産にシフトせざるを得ず、さらに一部地域で入札制度が実施されるなど、業界も価格競争にさらされることは避けられない。
 各メーカーではITを活用して需要予測の精度を高めるなど、さらなる生産の効率化や経費削減に努めている。

 学校側も他校と差別化を図ったファッション性の高い制服を採用することで、新入生の勧誘につなげたいと考えているため、各メーカーは多品種小ロットでの生産が増え、結果多くの在庫を抱えることになった。また原油高による原材料費急騰の影響も大きく、財務状況の悪化は深刻生地の無駄を最小限にするなどのコスト削減努力も限界にきており、製品への価格転嫁を行わざるを得ない状況だ。

 しまむらやユニクロがなぜ安いかというと、大量生産できるから。制服はそうではなく、採寸があるもので、なおかつ布地も毎日着るのに耐えうるように作られている。どちらかというとオーダーメイドスーツとかにジャンルが近い。

ここに勝部さんが言う「既得権益」の存在は見ることができない。勝部さんは修学旅行も高い、既得権益だと言っているけれど、だいたいの学校は修学旅行の内訳を保護者に公示している。まとまって見ると高いように見えるけど、価格ひとつひとつは妥当な範囲におさまっている。人数が多い旅行で、なおかつ全員が入れる宴会場などが使えるホテルが限られるので、宿泊料金が(たとえば「東横イン」などと比べて)高くなるのはしょうがない。

 

そして、このことは他の人も指摘していたが、制服(特に中学)は子どものあいだの所得格差を見えづらくするという意味で重要な役割を果たしていると私は思う。

小学校、みんなが私服だったころ、貧困家庭やネグレクト家庭の子どもは、明らかにそれが洋服に出ていた。毎日同じ服だったり、襟が黒ずんでよれていたり、泥が洗われていなかったり、布が明らかにだめになっていたり、独特の匂いがしていたりした。それが原因のいじめや仲間はずれもあった。

いじめなければいい、というのは確かにそうだ。でも「汚い」「臭い」と感じる子と、先生から「仲良くしなさい」と言われるのは、本心でいうとかなり厳しかった(これは脱線するが、そういう指名をされるのはいわゆる「優等生」の子どもが多く、私はある男の子の机を片づけさせられた。机の中からは腐った食べ物がでてきた)。なので、いじめるのはダメにしても、避けることを否定することは私にはできない。

中学に入って制服を着るようになると、そのような格差は明らかに見えなくなった。そのことは思春期の子どもにとってはよかったと、個人的には思っている。

 

というところから、勝部さんが言っている「学校の制服ってもう廃止にしませんか?」については、廃止にしなくていいという立場をとっている。制服が好きな生徒だっているし。

とはいえ、制服に対して不便を感じている人がいるのもわかる、いちばんいいのは「制服選択制」だよな~。

たとえば都立新宿高校は、「制服」はなくて「標準服」がある。10年前くらいはほとんど誰も着ておらず、生徒はほぼ全員私服登校だった。ただ、ここ数年は、生徒はほぼみんな入学時は標準服を着て、学校生活に慣れていくとともに制服のアイテムを自分の好きなものに切り替えていっているらしい(いわゆる「なんちゃって制服」だ)。もちろん私服で通ってもOK。

制服を着てもいいし、着なくてもいいなら、制服を着る事で苦しんでいる人も、制服を着る事で救われる人も、どっちもいい気持ちになれる。「制服廃止」と同じくらい夢物語かもしれないが、どうせ理想をあげるなら私はこちらの理想をあげておきたい。

 

*追記*

書き洩らした。ある程度選択できる私立や高校はともかく、公立中学はなかなか環境を選べない。制服が想定以上に高い学校もあるかもしれないし、そもそもまとまった金額が一度に出ていくことが経済的にきつい家庭もある。

そんな子どものためにも、制服(あと学用品)の分割払いができるといいよね…。そういう代替案や対応策はどんどん生まれるべきだと思う。

 

*追記2*

Twitterで教えていただいたことを追記。

 生保世帯や準生保世帯だと、制服や体操着にかかる費用全額ではありませんが、入学準備費という名目で4万~6万円程度支給されます。私服だと日常生活費の枠に含まれてしまい出ません。現行制度から言ったら制服代が支給される以上、制服の方が負担は少ないかと…。
 ただ、生保世帯だと2週間前後で支給なのですが、準生保世帯だと支給が遅く大体入学後3カ月経ってからなので当座の生活負担は大きいでしょうね…。更に準生保世帯は自治体によって支給額と支給基準も異なりますので一概には言えない部分ではあります…。

浅学ながら「入学準備費」というものの存在は知らなかった。やはり行政側も中学入学時にけっこう大きな額のお金がかかることは問題視されていて、対応策が(完璧とはいえないまでも)考えられているのだなあ…。