アオヤギさんたら読まずに食べた

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13日目 ルクソール西岸東岸欲張りプライベートツアー 男装女性ファラオ・ハトシェプスト女王に興奮する

ルクソールナイル川を挟んで東岸と西岸があり、日が昇る東岸は「生者の国」で生きている人間のエリア、日が沈む西岸は「死者の国」で葬儀場(ミイラを作る場所)や墓地がある。どちらもとても広いので、ルクソール観光は通常西岸で1日、東岸で1日使うのがふつう。

…なのだが、日程の都合上、どうしても東岸西岸を1日で回りたく…探したら多少お値段は張るがよくばりセットのプライベートツアーがあったので予約。朝7時に迎えにきたガイドさんはモーさんといい、めちゃくちゃ流暢に日本語を話すおじさんだった。このツアーがめちゃくちゃよかった!

 

まずは西岸に向かい、王家の谷(王たちの墓所が密集しているエリア)へ。ピラミッドはめちゃくちゃ盗掘の被害にあったため、時代が下ると王の墓はピラミッドではなく穴を掘って作るようになった(※それでもめちゃくちゃ盗掘の被害にあった)。数十箇所の墓所の中で、1チケットで3箇所を見ることができる。最後に発見されたのがツタンカーメンのお墓で、それは別料金。もちろんそこにも行く。

ガイドは墓の中でのガイド行為を禁じられていて(モーさんいわく「ガイドが中で喧嘩するから」らしい)、そばの日陰でいろいろ話してくれる。ここで古代エジプトの壁画の一般的なルールを教えてもらい、相当理解が深まった。その状態でリリースされて見ると、楽しさのレベルがぐーっと上がる。

行ったのは、ツタンカーメン、メルエンプタハ、ラムセス3世、ラムセス9世。最大規模はラムセス2世の息子たちの墓だが、現在公開していなかった(保存状態を悪化させないため、交代で開けたり閉じたりしているらしい)。ツタンカーメンは存命中評価されなかった王で、しかも早く亡くなったので墓も建築途中で終わった…というのは聞いたことがあったものの、実物を見ると「た、たしかにしょぼいかも…!」とわかる。ツタンカーメンのミイラも、副葬品がないと(※副葬品やマスクなどは考古学博物館にあるもんで)体の小ささも感じてちょっと物悲しい。

王家の墓は大賑わい

観光客にさわられすぎている性のシンボル

もう少しアップでお見せします

続いてハトシェプスト女王葬祭殿へ(ここは以前テロがあり、日本人観光客が多数なくなった悲しい場所でもある…)。ここのストーリーがとてもよかった。

ハトシェプストは古代エジプト唯一の女性ファラオ。エジプトでファラオになるには条件があり、「父がファラオ、母が正妃、男児」でなければいけないという。ハトシェプストは女性なので当然この条件を満たしていなかった。夫(トトメス2世)の死後、後継者として指定されたトトメス3世が幼かったため、代わりに政治を掌握。しかしトトメス3世が長じたあとも権力を手放さなかったし、義理の息子であるトトメス3世を遠征に赴かせたという。壁画の中の女王は男装をしている。そう、男装悪女なんですよ……。

男装しているハトシェプスト(このしっぽみたいなのが男性をあらわしている)

ハトシェプスト女王葬祭殿は、本来ファラオになる権利をもたない彼女が、「自分は正当なファラオである」という物語を流布するために作った葬祭殿。そこには「お告げ」と「自分の経歴」が壁画で描かれている。お告げは、近隣国に船を出し、交易で莫大な富を得られるというもの。自分の経歴のほうは、ファラオとしての正統性を示すため、ラーと自分の母が恋に落ち、生まれたのが自分(ハトシェプスト)であると示しているというもの。サイコ~。

力を付けたトトメス3世は、ハトシェプストの死後、ハトシェプストの作った神殿やこの葬祭殿、ハトシェプストの壁画を破壊したと言われている。実際ハトシェプストの姿だけが壁画から削られていたりする。そしてトトメス3世は、古代エジプトの中でもっとも優れた王のひとり。軍事 の才能と、公明正大な人柄で知られていたという。そう、ハトシェプスト、消された男装悪女なんですよ………。通説としてはトトメス3世が女王を恨んで説があるが、実は仲良かった説などもあり、いろんな夢が広がる。

こんなん絶対エンタメになっていてほしいよ~~と思ったらいくつか漫画があったので、帰国したら読むことを心に決める。

この左側に本来ハトシェプストの壁画があったのだが、削られている(写真だとわかりにくいが、現地だと削られてる感がすごい)

これは削られているのがわかりやすい。右はラーなので削れなかったと言われている



エジプト料理レストランでの休憩をはさんで、東岸のカルナック神殿へ。カルナック神殿は敷地がめっちゃでかい。さまざまな時代にまたがって拡張されていった複合神殿で、いちばん有名なのはラムセス2世による増改築部分(出たな!ラムセス2世!)。上で書いたハトシェプスト女王とトトメス3世はラムセス2世より前のファラオなので、彼・彼女らによる増改築部分もある(ちなみにここでもハトシェプストの姿は削られている。消された悪役男装女王…!!)。

オベリスクと柱はでかい。言葉を失う。エジプト、「でかい」のスケールが数段違って語彙力を失わせてくる。

カルナック神殿(奥にあるのがオベリスク。柱はパピルスの花とつぼみをイメージしている)



カルナック神殿のあとは、副神殿であるルクソール神殿へ。ルクソール神殿カルナック神殿スフィンクス参道でつながっている。最近公開されて実際に歩くこともできるというが、時間がないのととっっっっっっても暑いのでたぶんよっぽどじゃないとむり。

スフィンクス参道、絶対に暑い

ツタンカーメンと王妃の像

ルクソール神殿

ルクソール神殿はエジプトの歴史の中ではいったん権威を失っていた時代があり、敷地内にモスクが建てられている。また、迫害されていたエジプトのコプト教信者が隠れ住んでいた土地でもある。つまり、古代エジプトの神、イスラム教、キリスト教が混在している場所で、非常に面白い。

ルクソール神殿の敷地内にモスクがある

マジで写真だと見えづらいですが、キリスト教にまつわる壁画がルクソール神殿に刻まれている

イスラム教徒であるガイドのモーさんが、「エジプトの古代遺跡が破壊されるよりも、モスクが破壊されるほうが私にとってつらい。そういうものです」と言っていた。

ツアーの最後はアラバスタのお土産物屋につれていかれ、アヌビスとバステトの置物を購入(このあとの長旅で割れないか心配でしたが、帰国後確認したら無事でした。ほっ)。

ツアーが終わったあと、ナイル川でぼんやり夕暮れを見て、空港へと移動。ここでのタクシーは250EGPくらいだったかな…?(値切ろうと思えば値切れそうだったが、疲れていたのとEGPを使い果たしてしまいたかったのでもう決めた)。

ナイルの夕日

 

ルクソール空港はかなり小さい空港。ここからカイロへ戻る。

ルクソール空港



カイロの深夜3時の便でギリシャアテネに飛ぶ。旅も折り返し。カイロ空港でのトランジット時間つぶしは相当つらかった(さむい・そんなに広くない・寝なきゃいけない)。ここで疲れ切った夫が財布を保安検査エリアに落としてくるというハプニングがあったが、頑張って乗り切った。通りすがりの空港の人に感謝…………。

 

夫の感想。

「壁画の構成を事前に知っているかで面白さが全然違った! 左側に王の功績、右側に死者の書。ガイドがあるかないかで理解度が100倍違うので、ガイドをつけるか可能な限り予習していくのが必要なんだなと身にしみた。カルナック神殿が圧倒的でしたね。今まで見た建造物の中でも見た瞬間に圧倒される偉大さが飛び抜けていた。パピルスの花と蕾が重ね合わされている(柱の装飾)が面白いし、前日のアブシンベルまでに見ていた壁画の意味を初めて理解するというのもあって、いろんな物事が紐付いていく面白さを感じましたね。地味に面白かったのが(トトメス3世に関して)奴隷の名前がきちんと書かれていたこと。後世に残そうという意識があったんだと(※トトメス3世の公明正大さを示すために従えた奴隷の名前が壁画に刻まされている)。壁画も彫刻も見ていて思うことは、神と王をほとんど区別できない。オシリスと、オシリスの格好をしているラムセス2世の違いを、ガイドに聞かないとわからないのが面白かった。ある意味そこを区別してないのかも…」

ここでガイド付きの価値に開眼した夫、ギリシャの訪問先でのガイドをせっせと調達するようになります。

ネコチャン