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「むこうぶち」1巻全話レビュー

むこうぶち 高レート裏麻雀列伝」(竹書房)という傑作麻雀漫画があります。傑作なのですが、なにぶん長期連載なので、「あの話っていつだったっけ?」とか、「あのキャラの初出いつごろだっけ?」とか、「こないだ再登場したあいつは昔どんな感じでカイ(人鬼)にやられたんだっけ?」などを思い出すのがむずかしいよね……と先日友人と話しました。

というわけで覚書的にむこうぶちの全話レビューにチャレンジしたいと思います。なにぶん長期連載なので途中で力尽きることが十分ありえます。また人名などを間違えることもありそうなので気づいたらコメントなどで教えてください。

 

1話 王座失格

【打ってる人】水原、安永(プロ雀士)、大島(プロ雀士)、飯倉(プロ雀士)/カイ(最高の男)

【一言で言うと】水原とカイの出会い

【あらすじ】 競技麻雀の研修プロ・水原は、競技麻雀の大会「牌王位」の頂点に限りなく近づいた。総合1位・トップ目で迎えた最終戦、面子は水原、安永、大島、飯倉。安永は4mでツモ切りリーチをかける。下家の水原は安永が前順上家の1mに当たっていないというところから1mを切るが、それは安永がトップの水原を狙い打った三倍満だった。…が、そのアガリは頭ハネとなり、幻のものに。最終的に水原は優勝するが、誰もがこの幻のアガリを見ていたため、当人の水原ですらも優勝を受け入れられない。会場内の揶揄する声に水原が思わず激高し、相手に殴りかかってしまう。安永がそんな水原を(殴って)止め、目が覚めたらそこは赤坂の雀荘・東空紅だった。

その雀荘で打っていたのが黒衣の男・カイ(にんべんに鬼が通常変換で出ないのでカタカナカイで統一します)。クズ手をツモ力で形にしていき、チートイドラ2を拒否、最高形は四暗刻に仕上げ、三暗刻トイトイになる他家の牌をスルー、自力でラス中(ドラ)をツモって御無礼するカイに、水原は痛烈な印象を抱くのだった。

【感想】麻雀というゲームの「相手を狙い打ちにすることもできる」感じが1話目から出ているのは楽しいですね(こういう山越しロンはMリーグでも多井プロとかが印象的なタイミングでやってくれますね) ちなみにアバンが「あれから20年…」で、1980年代を回想するという作りです。むこうぶち(連載中)はまだこの地平にたどり着いていません。サングラス(眼鏡?)を外して「みんないなくなった」と回想する男性は一体誰なんでしょうか。むこうぶちの最終回はおそらくこの男性につなげるようになると思うのですが、まあ水原なのかな……?

2話 東風戦アリス

 【打ってる人】水原・安永・上島(インテリアデザイナー)・工藤(強そうなおじさん)

【一言で言うと】水原、高レート雀荘の洗礼を受ける

【あらすじ】前回遭遇したカイにはやる気持ちが抑えきれず、東空紅に再訪する水原。卓を囲んだのは東空紅の常連の3人。水原は競技麻雀とは違う高レート麻雀ならではの「東風戦」「アリス(特殊なご祝儀ルール)」に翻弄され大敗を喫し、カイと打つこともできずに帰路につく。

【感想】このときはまだ水原が会社勤め。光洋証券というバブル期にはイケイケだったであろうサラリーマン姿が見られます。上島(インテリアデザイナー)の変幻自在なクソ鳴き(そしてそのクソ鳴きに対応しすぎてしまってテンパイを逃す水原)、クソ鳴きかと思ったら本手、みたいなところはパイレーツの石橋プロっぽくて楽しいですね。

3話 見・ケン

 【打ってる人】水原、安永、工藤、お客さん/カイ/水原、安永、工藤、上島

【一言で言うと】水原、麻雀の真理をつかむ

【あらすじ】前回の大敗からまだ高レート麻雀に対応できていない水原。安くて速い手でアガリを連発するも、結局まくられるという状況が続いた。そこでやってきたカイのうち筋を見学していると、カイは鳴いてアガリつつも、リーチ一発ピンフ三色ドラ1の出あがりをスルー、自分でツモって6000オール。当たってたじゃねえかと怒る他家に「御無礼しました 勢いを殺せませんので」と語る。水原は雪の中、「鳴きでリズムを作って面前でツモってでかい手を上がるんだ」という“真理”を得る。そして2話のメンツで再戦。水原はカイから得た真理で初の大勝ちを飾る。

【感想】御無礼には過去形もあります。カイには三色にならない6mをツモってきてほしかった。まあたぶん普通に上がりを拒否して9mをツモるのを待つんだと思いますが……。

4話 死に金

【打ってる人】小暮(借金で首が回らなくなった米穀商)、カイ、野木(雀ゴロ?)、山崎(土建屋の社長?)

【一言で言うと】カイは負けてる人には金を貸さない

【あらすじ】借金の返済に追われる小暮は、高レートマンション麻雀で金を増やすことを思い立つ。「負けない麻雀をしなければならない」と緊張する小暮の手は縮こまり、卓のカモに。マンション麻雀では手持ちの金がなくなれば終了するか場(もしくは店)の誰かから金を借りる。カイは道中、山崎には金を貸すが、窮地に陥った小暮には「死に金は回せませんね」「死んだ金は卓の上に帰ってこない」と断る。結果、小暮は借金を返すことができず、海に浮かぶのだった。

【感想】むこうぶちはレギュラー・準レギュラーキャラクターを掘り下げる回と、こういう単発回(死人も出る)があり、単発回はそれだけ読んでも十分面白いので人に勧めやすいです。1巻の中ではこの「死に金」がいちばん勧めやすいかも。負けてる人は視野が狭くなったり判断が弱くなったりするのでカモにされることはまああるあるですね(そもそも麻雀は負ける可能性がかなりあり、かつ負けてくるとできることが少なくなっていくゲームなので、追い詰められている人がやるギャンブルではないんですね)

5話 賭場荒らし

【打ってる人】キャバレー「マカオ」の店主、代打ち3人/カイ、代打ち3人

【一言で言うと】カイ、ヤクザの麻雀大会を荒らす

【あらすじ】キャバレー「マカオ」の店主は、組主催の麻雀大会に参加していた。大会とは聞こえがいいものの、ある種みかじめ料徴収的なイベントで、組の世話になっている商店主以外は組が用意した代打ち。商店主たちは自前の金で参加しているが、代打ちは組から廻銭(かいせん)してもらえるために、基本的に商店主たちには勝ち目がなく、素人から金を巻き上げるイベントなのだ。わかってはいるが組との付き合い上参加せざるをえない店主は200万円分負け、卓から抜ける。代わりに入ったのがカイ。カイは代打ち相手に無双、何十連勝もし、代打ちたちは廻銭に次ぐ廻銭。組の麻雀大会資金を全て吐き出させ、カイは去っていくのだった。

【感想】カイがコインロッカーにお金を貯めているエピソード初出です。

6話 親流し

【打ってる人】カイ、末広(ヤクザ)、若武(ヤクザ)、元井(偉い人)

【一言で言うと】カイ、麻雀における親番のリスクを熟知

【あらすじ】「ラス親はアガリやめができるから有利」という話から始まり、親で連荘したときに、親を続行するか流せるかを自分で選択できるという特殊ルールを採用することに。むろん他3人は基本的に親を続行するのだが、カイだけは小手でもツモったら流してしまう。大きなアガリの印象がなかったカイだったが、実は連続2着を取り続けていた。親は加点のチャンスだが、同時に親被りのリスクも背負っている。振り込まない、親被りをしない、自分の親番のときにツモアガリをしていれば、勝つことはなくても負けることはない。そうしてツキを貯め続けていたカイは終盤爆発、1着を取り続けるのだった。

【感想】4000-8000の親被りとか死にたくなりますよね。このあいだ白鳥プロが24000上がったけど最終的に佐々木プロがトップを取ったときに、麻雀はロンよりツモで上がったほうが強いんだな~と改めて思ったのを思い出しました。

7話 列・レツ

【打ってる人】カイ、安永、若武、打ち子(章二)

【一言で言うと】カイ、組んで打つ人たちにおこ

【あらすじ】大勝しないカイを見て、今日は不調なのだろうかと気にする安永。そこに、6話でカイに負かされたヤクザの若武がリベンジマッチをしかけてくる。打ち子で入った男の無理鳴きもあって手をつぶされるカイと安永。しかしふたりの様子を見て、カイと(遅れて)安永は、ふたりが列(組んで麻雀を打っている)であることに気付く。おこなカイは爆発、ふたりを飛ばして大勝ちする。

【感想】安永のカイへの巨大感情への端緒がもう見えてる。

8話 水の男・1

【打ってる人】日蔭と他のお客さん/カイと他のお客さん

【一言で言うと】日蔭さん初登場

【あらすじ】毎週同じ曜日の同じ時間同じホテルの部屋に泊まる習慣を持つ男・日蔭。彼は確率を重視した打ち手で、強すぎてひとつの掛場を出禁に。新たな強敵を求め、紹介された別の高レートマンションに向かう。そこで確率的に(裏ドラも計算に入れた)勝ちを重ねる日蔭だったが、他の客の実力に物足りなさを感じる。そこで強いと評判のカイの麻雀を後ろ見。確率的に“正しくない”カイの麻雀を目にし、次出会ったときは確率麻雀で倒せると自信を抱くのだった(フラグ)。

【感想】この「カイってやつ、謎の麻雀だな。俺は勝てるぞ!」→「やっぱり勝てなかったよ…」は今後頻出です。確率的にどうこう言うけどカイの麻雀は一発の9mスルーして「勢い」を重視する麻雀だからそういう次元じゃないということを日蔭さんは知らなかったのだった。かわいそうに…。