桂あいり先生「カラミざかり」の完結巻がすばらしかった
私はNTR漫画を(平均的な30代女性の中では)比較的よく読んでいる。今年の私的ホットトピックは桂あいり先生の「カラミざかり」が完結したことだ。
「カラミざかり」はメチャクチャ広告もまわっているので、読んだことはなくても目にしたことがある人は多いと思う。
主人公の山岸高成はクラスメイトの女子・飯田里帆に淡い思いを寄せている。ある日、ざっくばらんな下ネタ雑談をきっかけに、山岸の親友の男子・吉野、飯田の親友の女子・新山と4人で吉野の家に行くことになる。そして流れで「そういう」空気になり、なし崩し的に4人プレイに。吉野は新山と飯田両方の初めてを(流れで)奪い、山岸はそれを見てショックを受ける……というのが1巻の内容。
これはけっこうジャンル的にはNTRと呼ぶかは絶妙なところで、桂あいり先生もサムネイルに「NTR」とかのワードは書いていない。FANZAなどのサムネイルは作品属性をババーン!と書くところが多いのだが、「カラミざかり」はそうではない(広告ではNTR記載があるかは確認していないので不明)。
アラサー女が3人以上集まると必ずだれかがカラミざかりを購入している、これがカラミざかりの法則です(完結おめでとうございます)
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2020年11月13日
2巻は主人公であるはずの山岸からかなりカメラが離れ、里帆がイケメン大学生にたらしこまれるストーリーになっていく(余談だがこのイケメン大学生、同じく桂先生の「夫の部下にイカされちゃう…」シリーズの男にそっくりで先輩と大変盛り上がった)。
そして先日発売された3巻は、予告として桂先生が「ハッピーエンドです」と言い、ファンを「前回の展開からどうハッピーエンドに?」「というかハッピーエンドとは?」とアワアワさせていたが、2巻で「里帆の物語」として舵を切ったのと呼応するように、最終的に「山岸と里帆の物語」としてこれ以上ないさわやかなエンドを迎えたのだった。
NTRは話にさくっと背徳感を付与できるため、男性向け同人誌での人気が高い。以前こういう調査もあった↓
しかし人気があるといろいろな作品が出てきて、「付き合っている女の子がほかの男にとられる」は当然NTRだが、「好きだった女の子がほかの男にとられる」はNTRなのか?という問いかけも出てくる。つまり「一回もお前のものだったことなくない?」的なね。それを表す言葉としてBSS(僕が先に好きだったのに)という言葉も生まれているけれど、NTRと比べて知名度があるかというとそうでもないと思う。
「カラミざかり」は、その「付き合ってもいない女の子とNTR関係になるにはどうすればいいのか」というひとつのグランドフィナーレ的な答えを提示している。NTR(寝取られ)とは、ともすればNTRされる側とNTRする側の男同士の優劣対決のニュアンスを帯びることがある。しかし「カラミざかり」の里帆は、確かにNTRれているのだが、究極的にはNTRせているのだ。という意味で、NTRれる男とNTRれる女のさわやかな関係の話になって、読み終わったあと「……ホォ~~~~……」と感動してしまった。
カラミざかり、3巻で限界突破したというか、「付き合ってもいない(一度も自分を選んでくれていない)女の子のNTRとはいったいなんなのか?」ということを突き付けてくる傑作でした。NTRとは共犯関係なんだよな(ろくろ)
— 青柳美帆子 (@ao8l22) 2020年11月13日
ある意味ではNTR作品の元祖でもある「ネトラセラレ」に帰結したという向きもあるかもしれないが、やはり夫婦であった「ネトラセラレ」と、他人でありつつもNTRにおいて関係性を作り上げた里帆と山岸の関係はまた違うところもあるように感じる。そして里帆の「一見清楚で、流されて搾取されているようにみえるが、実は男たちを(ある意味では)搾取している」というキャラ造形は、なかなか桂先生くらいにしか描けない素晴らしさだった。
NTRとちょっと性の描写が大丈夫な人にはぜひ読んでほしい作品です。