死んだ推しが生き返った、あるいは2016年のトゥルー・ロマンス
11月28日は私にとって歴史に残る日だった。とうの昔に死んだと思っていた推しが生き返ってきたのだ。
【警告】ここから先、「魔人探偵脳噛ネウロ」のネタバレ……ネタバレ?があります。
その推しの名は笹塚衛士という。ご存じない方もいるかもしれないので説明しておくと、笹塚衛士は松井優征の「魔人探偵脳噛ネウロ」に登場するキャラクターで、顔がいい刑事のおっさん(とお兄さんの中間キャラ)である。
この人です。
文庫11巻にして初めて表紙を飾っているのは脇キャラだからではなくていろんな事情があり彼が「11」にちなんだキャラだからです。コミックス版ではちゃんと3巻に出ているのでかなりの重要キャラですよ!!!
この笹塚衛士、低血圧っぽい喋りをする刑事。1話から出演している超レギュラーキャラクターで、主人公のヤコとネウロを絶妙な距離でサポートし、複雑な過去を持ち、警察内でも抜群の実力と信頼を勝ち取っている男でした。欠点がない。そんなの好きになっちゃうよ~!ということで好きになりました。
なんと小説では主人公になっています。うわ~、愛されてるね!好き!しかも書いたの東山彰良じゃん!
魔人探偵脳噛ネウロ 世界の果てには蝶が舞う (JUMP j BOOKS)
- 作者: 松井優征,東山彰良
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/07/20
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好きになったのですが。
死にました。
(~唐突な自分語り~)
笹塚衛士が「ジャンプ」本誌で死んだあの日、2008年11月、私はまだ高校生で、日付が変わった頃にコンビニに行き、震えながら読み、呆然としながら家に帰り、まずひとしきり泣き、それからいったん寝て、朝5時に起き、フラフラと学校に向かう電車に乗りました。
私が当時使っていた電車には途中停車駅に「笹塚」駅がありまして、その駅名が目に入った瞬間涙が出る始末。ほうほうのていで学校に到着しましたが授業なんて出れず即保健室に行き、保健の先生に「推しが死んでつらい」と言って休ませてもらいました。午前中ずっと泣いてた。
ずっと泣いてたらだんだん落ち着いてきたのですが、昼休みになったら友人Oさんが保健室にやってきて、ボロボロの私を「アオヤギ大丈夫~?あっ泣いてねえじゃんつまんねえな^^もっと泣けよ!」と煽りに来たので元気が出ました。まあ彼女も推し(ガンダムOOのロックオン)を亡くしているので許す。
(~唐突な自分語り終わり~)
彼の死についてはもう作品を読んでくださいとしか言いようがないのですが、ただ一つだけ言えるのは、彼の死はどうやっても防ぐことができなかったということです。彼というキャラクターを完成させたのは彼の死によるものですし、「ネウロ」という作品自体、彼の死がクライマックスの展開の大きなきっかけ(というか、欠かせない要素)になっているんですね。
わたくしめは「IF」とか「生存パロ」とかが大好きなタイプのオタク女でございますが、「ネウロ」に関してはどうしてもその想像ができなかった。あまりにも笹塚衛士の死が必然だったからです。
「ネウロ」の最終巻、後書きで著者の松井優征は次のように語っています。
連載が決まったとき、最重要課題に考えたのは「商品として成立した作品を送り出したい」という事でした。自分の能力に可能な限りの範囲で、本を買って頂く方に対して責任を持って始め、責任を持って盛り上げ、何よりも責任を持って終わらせるという事を、週刊少年ジャンプという潮流の激しい雑誌の中でぜひやってみたかったのです。
そのために、最初の三話を始めとして1、2、3、7、10巻用のストーリープランを作り、どの段階でも極力責任ある終わり方が迎えられるように備えました。そしてたどり着いたのが、最長の(ほとんど漠然としか考えてませんでしたが)20巻プランです。
さらっと言っていますが連載初めての新人の考えることではない。松井優征タダモノじゃねえ。
この言葉に従うと、笹塚衛士が生き残れる道というのは、1、2、3、7、10巻用のストーリー、つまり初期段階~中段階で打ち切りが決まった場合でのみ発生するもので、「ネウロ」を応援したい、「ネウロ」という作品を最後まで完全な形で読みたい、と思った私自身が、笹塚衛士を殺したようなものでした。
さてそんな風に死んだ笹塚衛士ですが、2016年、まさかの生き返りを果たしました。
11月28日に発売された「週刊少年ジャンプ」の「みんなのこち亀」というこち亀完結記念コーナーで、松井優征が描き下ろし読み切りを書いたのです。
内容は、「暗殺教室」(これも超傑作です)のキャラと「ネウロ」のキャラが、こち亀の魅力を伝えるクロスオーバーもの。そこに笹塚衛士はいました。天使のわっかもつけず!!!!生きてる!!!!!生き返った!!!!!!
筋肉少女帯の曲に「トゥルー・ロマンス」っていうのがあるんですよ。
「オレはもう一度 この胸で抱き締めるために 地獄から蘇ったぜ 何か問題あるかよ」
「全然ないわ あたしあなたに抱かれるために 生まれてきたんだから もうどうってことないわ」
ラーララ ララ ラブ・ゾンビ! ラブ・ゾンビ!
ラーララ ララ ラブ・ゾンビ! ラブ・ゾンビ!!!!!
マジでこんな気持ちでした。
とうに死んだと思っていた推しに、また会えるなんて、2016年はいい年だったな~。いや、ほんと、良かったな~。
こんなに書いてアレなんですけど(2500字)、読み切りで笹塚衛士は1コマしか出ていません。なのでもしかしたらあえて読むほどのものでもないかも。だけど生きているので神に感謝。ありがとう松井神。ラブ・ゾンビ!