新春浅草歌舞伎が楽しかった話
新春浅草歌舞伎に行ってきました!
新春浅草歌舞伎はパンフレットによると「初めて歌舞伎をご覧になるお客様にも親しみをもってお楽しみいただける公演」という趣旨ということで、かかる題目も(私でも)タイトルを知っているようなものだし、出てくる役者さんもみんな新進気鋭の若手です。尾上松也、坂東新吾、中村隼人、中村国生、中村米吉、坂東巳之助らが出演。貼れないですがポスターに使われてるメインビジュアルも赤文字に白い服とアイドルっぽい。
第一部は「三人吉三巴白浪(大川端庚申塚の場)」「土佐絵」「与話情浮名横櫛(源氏店の場)」、第二部は「毛抜」「義経千本桜(川連法眼館の場)」です。私はよりミーハーなので第二部に行ってきました。
そもそも歌舞伎に行きたいと思ったのは、
・大学院の授業で歌舞伎(江戸時代の役者絵)を勉強して、あまりにもそこで勉強ができなかったから
・ワンピース歌舞伎を見に行って死ぬほど楽しかったから
です。ワンピース歌舞伎はもぐもぐさんのこのエントリに惹かれて見に行きました。超エンターテイメントだった!
これからスーパー歌舞伎は毎回行きたいと思います。
それはさておき。
第二部!楽しかったです!
まず行って驚いたこと
音声ガイドが超絶充実している!1700円(1000円は預り金。ガイドを返すと1000円返してもらえるので実際は700円)でガイドを借りると、ものすごく丁寧な解説と、タイミングのあった現代語訳が流れてきます。
歌舞伎は言葉がやっぱり現代語ではないし、独特の声の張り上げ方で慣れていないとうまく漢字変換できなかったりするんですが、ガイドを聞いていれば話も面白いところも多い。歌舞伎初心者は絶対に借りるべきだと思いました(下手したら借りないとわかんないこともあると思う)。
あとは屋号を叫ぶ人!「播磨屋!」とか。いやもちろん知識としては知ってるんですけどね、「これ間違えたらどうするんだろう…」とかめっちゃハラハラしてしまった。アイドルのコールもいつも緊張する身としてはよりタイミングがわかりにくいあの掛け声はすばらしい。
私が行った会は二階席にひとり、一階席にひとりそういうTOおじさんがいるようでした。いつも男性がやっているぼんやりしたイメージがあるんだけど、女性が叫ぶこともあるのかな?あとあれって事前にそういう馴染みの人どうしが「俺やるんで」みたいな相談をしたりすることもあるのかな?掛け声ないとちょっと寂しい感じしますよね。そういう回もあるんでしょうか。
歌舞伎十八番の内 毛抜
「オハコ」の元ネタの「歌舞伎十八番」ですね。ストーリーは
・小野家の家宝の短冊がなくなる
・小野家にはお姫様がいる。許嫁は文屋家。文屋家からの使い・粂寺弾正がやってくる。用件は「まだ結婚しないのなんで」というお伺い
・結婚できない理由は、姫が「毛が逆立つ」という奇病にかかったから(???)
・弾正が見てみると確かに姫の毛は逆立つ(?????)
・弾正が暇をつぶしていると、鉄でできた毛抜き(今と同じ毛抜き)がピン!と立つ(!?!?!?)
・気づく弾正
・屋根裏にめっちゃでかい磁石を持った忍者がいる!!!忍者の磁石のせいで毛抜きと姫の髪は逆立っていたのでした(!?!?!???)
・企んでいた悪者が成敗されてハッピーエンド
どんな強力な磁石だよ!?
と思いましたがそこを深く考えるのは野暮というものでしょう……。磁石はつよい。髪も逆立つ。
弾正役は坂東巳之助さん。「ワンピース歌舞伎」でゾロとボンクレーの二役をやっていてすごいな~~と思ってました。弾正は男も女もいけるクチというキャラクターで、劇中いきなり美少年を口説きだしたりするんですが、そのどうしようもないスケベなおっさんな感じがとてもよかった。
例:美少年に「馬に乗る稽古はつんでる? あっつんでないんだ~~じゃあワシが教えてあげますぞグフフ~~ほらこうやってね…グフフ…」
美少年に「馬の乗り方を教えてあげる」とか言い出した時は「こっちが深読みをしすぎているの?!」と焦りましたがすぐに音声ガイドで「弾正は男性もいけるようですね」みたいな解説も入ってとても助かりました。
あと弾正は両方イケるので腰巻を口説いたりもするのですが、口説かれた腰巻が
「びびびびび~!」
と言って弾正を拒絶するのもよかった。「びびびびび」とは「あっかんべ~」みたいな感じらしいです。
ちなみに大学院で役者絵のどんな勉強をしていたかというと、歌舞伎役者を描いた役者絵を見てその題や配役を調べるというやつでした(私これ本当に苦手だったんですけど…)
http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/enpakunishik/results-big.php?shiryo_no=201-0195
これは九代目市川團十郎の毛抜。毛抜きめっちゃ立ってる。なるほど。
義経千本桜 川連法眼館の場
義経が出るけど義経が主役じゃない。ストーリーは
・頼朝に追われて都落ちする義経は川連法眼の館に身を隠す
・義経は都から離れるときに静御前を家臣の佐藤忠信に預けた
・佐藤忠信が館にやってくる
・でも「静御前は預かってません!」という
・なにかがおかしい。偽物かもしれない…
・でも真実は逆。最初に来た忠信が本物で、静を預かった忠信が偽物
・実は静を預かったのは、静の持つ「初音の鼓」に縁のある狐だった!
・静とともにやってきた狐忠信。姿を隠しているが、静が鼓を鳴らすと正体を現す
・きつねかわいい
・狐が義経への忠義をみせ、追っ手をやっつける
という感じ(ちょっとわかりづらい要約ですみません)。
義経を演じるのは中村隼人さん。ま~~~イケメンで好きなのですが凛とした義経でした。
本物の忠信と狐忠信を一人二役で演じるのは尾上松也さん。やっぱり狐に戻ってからがすごくて、
早変わりや、「そこから出るんかい!?」とびっくりするような登場や、お、落ちたー!と言いたくなるような退場の仕方や、後半の殺陣、それからかわいらしい狐の身振りなどで、まあすごいし体力超使いそうと思いました。
正直前半狐が出てくるまではウトウトしかけてしまったのですが(すみません…)出てきてからは仕掛けや派手な動きの連続で大変おもしろかったです。
http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/enpakunishik/results-big.php?shiryo_no=100-4289
これが三大豊国が描いた義経千本桜の源九郎狐。尾上さんも狐に戻ってからはこういう白い狐モッコモコ服でした。手足が狐っぽいところがあざとかわいいですわ。
楽しかったです!中村隼人さんか坂東巳之助さんが出ているときにまた行きたいな~。