私が書いた増田を探して
今から書くことは9割フィクションなのだが、はてな匿名ダイアリーというサービスがある。匿名で日記を書けるサービスだ。通称増田(アノニマスダイアリー、の真ん中をとって、増田)。
私はたまに増田を書いている。そして増田を読んでいる。新着エントリの中に、注目エントリの中に、時折知っている人の文章が見える。
というと非常に妄想じみているが、増田の作者も人間であるので、知り合いだと「このネタは○○さんっぽい」「この言い回しは××さん」「こないだ会ったとき△△さんこういうこと言ってたな」とぴんとくるポイントが多いものだ。それから文体や改行のクセなどもある。
これは以前書いた増田の特定方法のエントリ。こういうことをやっていたら気持ち悪がられた。
数多ある増田の中から知り合いを見つけたとき、とても嬉しくなる。そして同時に、私も見つけてもらいたいなあ、と思ってしまうのだった。
私は増田を書く。増田に書くことは9割妄想で、1割本当のことである。
増田を書くとき、私の性別はときたま男になり、年齢は30代になったり10代になったりする。恋人がいたりいなかったり、配偶者がいたりいなかったりする。いかにも私が言いそうなことを書くときもあれば、絶対に私が言わなさそうなことを言ったりする。
その中から、私が書いた増田を見つけてくれたら、それはもうとても嬉しいことなのではないか。
じとめふすきーさんという友人のミリオタおじさんが、こういうツイートをしていた。
「増田で私の書いた記事を探して」というメッセージが書かれたメモを残して交際相手が姿を消したというところから始まる物語
— じとめふすきー(12/30東I55b) (@cvegr) 2015, 12月 19
これはいい。とてもロマンチックだ。
だから私も交際相手の机の上にメモを残してきた。「私が書いた増田を探して」。そして旅に出た。旅先から増田を書いた。今、東北にいるから、迎えに来て。
増田を書いて1時間後、交際相手からLINEが来た。
「見つけたよ。でも、ウソをついているよね?たぶん君は東北にいない。というか旅に出ていないんじゃないかな?」
「どうしてそんなことを言うの?迎えに来たくないのかな」
「君の増田、縦読みで『うそです』って書いてあった」
「結婚して」
そして私たちは結婚した。彼の苗字は「増田」であった。
産まれた子どもは女の子だった。私はその子に「果奈」と名付けた。「はてな」と読む。果奈はすくすくと育っていった。5歳でインターネットをはじめ、7歳で親子喧嘩の末に「論破www」と言い放った。そして彼女は中学生になった。
中高一貫の女子高に入った彼女は、持ち前の高いプライドで同級生を威圧した。彼女は入学3日で孤独になったのだった。しかしそんな彼女に構ってくる女がいた。彼女の名前は、夜見こまちと言った。
こまちはきれいな娘だった。医者で年収1000万以上の父親と、専業主婦の母親をもち、入学まもなくクラスの中心人物になった。こまちは果奈の席の前に立ち、にこにこと言い放った。
「ねえねえ、果奈ちゃん、自分が浮いているの、わかってる?」
果奈はこまちから目をそらし、いらいらと返す。
「浮いてるんじゃない、慣れあうつもりがないだけ」
「果奈ちゃん! その態度がカッコイイと思ってるんだね。協調性って知ってる? あのね、あなたみたいな人のせいで、クラスのフーキが乱れてるの」
「なかよしごっこの維持ゴクローサマ。誰にも頼まれてないのにそういうことをしてるなんて、こまちちゃんは暇なのかな?」
「果奈ちゃん、果奈ちゃんって、もしかして自分以外の人は全員バカだと思っているでしょう? あのね、それって、すごぅくダサいのよ。自分より下の人とうまくやれないって、ただ単に能力が低いだけなの」
家に帰った果奈は、増田に長文を書いた。そしてふたりは、友達になったのだった。
という妄想を、最近毎日しています。