最近、BL小説をたくさん、とりわけ一穂ミチをいっぱい読んでいます。なぜかというと、一穂ミチ芸人ことひらりささんに「これやばいよ」と勧められたからです。読んでみたところ本当にやばかったのでハマっています。→ひらりささんの一穂ミチに関するnoteはこちら
『ノーモアベット』は「日本に公営カジノができたら」という設定で展開するBL。東京都の公務員だった逸(いつる)は、日本初の公営カジノに広報として出向することに。そこには家族同然に生まれ育った従兄弟の一哉(かずや)がディーラーとして勤めている。一哉の両親は亡く、逸の父親が家に連れ帰ってきた。
逸の父親は有名なディーラーでギャンブラー。「普通」の生活ができない彼は、子どもや妻に愛情はあるけれども、海外を飛び回ってめったに家に帰ってこない。そんな父の姿に、逸は反感を抱き、「普通」に暮らそうとする。しかし一哉は逆で、父に憧れを抱き、カジノやギャンブルといった世界へと足を踏み入れる。
幼い頃はふつうに喋れていたのに、年齢を重ねるごとにぎこちなくなっていく2人。カジノで一緒に仕事をしていても、そのぎこちなさはなかなか無くならない。2人の関係はいったいどうなってしまうのか……?
幼なじみBLの亜種であり、素直になれない受けと攻めがいかにくっつくのか、というある意味王道なBLではあるのですが、面白いのはそこに「ポーカー」という要素を入れたこと。
ポーカーというと子供のころにやったルール(チェンジしかできないもの)を思い浮かべる人が多いと思いますが、今の主流は「テキサスホールデム」というルール。もちろん本作『ノーモアベット』で描かれているのもテキサスホールデムで、ちゃんと作中にルール説明があります。けっこうわかりやすいです。
ポーカーは技術と運と、そして心理戦(駆け引き)で勝敗が決まるので、囲碁や将棋やチェスと比べて「人間関係の心理戦」をゲームの上で展開させるのに向いている題材だと思います。多くのラノベ読みの印象に残っているのは『マルドゥック・スクランブル』2巻のカジノシーンではないでしょうか(あれは確か最後はブラックジャックで勝負が決まるけど)。
マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
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ですが、ポーカーを扱った(ポーカーものではなく、ポーカーを事件解決の劇的な道具にしている)小説というのは意外に少ない。ましてBLならなおさらです。
『ノーモアベット』は、最後、恋のゆくえがポーカーの勝負のゆくえに託されます。その決着のつきかたは正直賛否が分かれそうではありますが、「想いを賭ける」という意味ではとてもよくできていると思います。
『ノーモアベット』まとめ
■自由奔放ワンコ系ディーラー×ちょっぴり頑固な公務員
■カジノが好きな人、ポーカーが好きな人におすすめ