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アオヤギさんたら読まずに食べた

インターネットで書いたことや考えたことなどをまとめます

5月1日の文学フリマ東京で月村了衛作品ファンブック「有限王朝マガジン」vol.2を発行します

BL 月村了衛 雑記

とうとう明日になってしまった!めちゃくちゃギリギリになりましたが明日の文フリの頒布物についてお知らせします。

 

・スペース番号

チ06「有限王朝」

 

・新刊

月村了衛作品ファンブック「有限王朝マガジン」vol2 特集◎「月村了衛の冒険小説」

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■評論
空挺部隊というギミック 『土漠の花』と第一空挺団 しげる/『土漠の花』
自衛隊が正調冒険小説に 登場した日 えいちえむえす・ゆりしーず/『土漠の花』

■二次創作
マーケットルージュ 真堀橙子/『ガンルージュ』
巣立ちの頃 千倉歩/『槐―エンジュ―』

Friday Night,Blade Fight アイダカズキ/『影の中の影』 

悲しみに閉ざされて泣くだけの君じゃない 一号/『槐―エンジュ―』 
土漠オブ・ザ・デッド キリエ/『土漠の花』 

■トーク
「月村了衛の冒険小説愛」全話トーク(語り手:えいちえむえす・ゆりしーず/聞き手:アオヤギミホコ)

■表紙

いとう

116ページ、800円での頒布です。

サイトはこちら。→有限王朝マガジン

 

・既刊

「有限王朝マガジン」vol.1 特集◎ノワール

 

・委託(予定)

機龍警察合同誌「流血一滴」(僅少)

一号機龍警察個人誌「MAD」「壊過」(残部少)

 

・寄稿

「風狂通信」vol.3にナンパ師BL小説「ひとでなしの恋」を寄稿しました。

サイト→風狂奇談倶楽部公式 Web

新刊を一緒に買うとそれぞれ100円引きという謎フェアも実施しております。

サンプルはこちら。

 ――そうおれってね、これまでわりとうまくやってきてたんだ。中学受験、そうお受験ってやつだよ笑えるでしょ、そのお受験に成功してさ、高学歴ルートに乗ってきてたわけ。中高一貫の男子校はそれはそれは楽しかったよ。おれ、頭は悪くなかったし、要領はいいほうだったからさ、クラスでも悪目立ちはしなかったし……。

 深夜二時過ぎ、とっくに終電が終わったナンパ師御用達クラブで、酒が若干過剰に回っているらしい男がつらつらと喋っている。僕はそれに、うんうんとテンポのいい相槌を送っていた。彼は名前を佐藤と名乗った。僕は今日、彼の即席のウィング――つまりナンパの相方としてここにいる。

 

・新刊「有限王朝マガジン」vol.2サンプル

それぞれのサンプルはこちら(出だしの一段落を引用しています)。キリエさんは今回漫画で参加していただきました!(そのため漫画のみサンプルなし)

 

空挺部隊というギミック 『土漠の花』と第一空挺団 しげる/『土漠の花』

 『土漠の花』において印象的なのが、過酷な自然条件の中であえぐ自衛隊員たちの姿が幾度も描写される点だ。「微かな踏み跡を辿り、列はのろのろと前進する。手にしたAK-47がやけに重く、そして熱い(107ページ)」「誰かが呻いた。自分だったかもしれない。すっかり水気を失った舌は乾いたヘチマのようになって口の中の異物と化している。到底自分のものとは思えない。あの濁流の泥水が恋しく思われるほどだった(111ページ、112ページ)」と描写される灼熱の荒野を歩く辛さやAK-47の銃身の熱さ、「常軌を逸した砂嵐の中での格闘は、急激に体力と気力を奪い去っていく。暴風によろめきながら、そして高温に大量の汗を流しながら、死にもの狂いでもがき続ける(211ページ)」のような見るからにキツそうな砂嵐の中での格闘の困難さなど、彼らに襲いかかる厳しい自然の描写は主人公達と読者を否応なく引きずり回す。

自衛隊が正調冒険小説に登場した日 えいちえむえす・ゆりしーず/『土漠の花』

 砂漠と冒険小説の縁は深い。乏しい水、遮るもののない厳しい日差し、結果として発生する命を脅かす過酷な自然環境はただ生存することだけにも多大な努力を必要とし、その苛酷さがもたらす人口、あるいは「社会」の希薄さは利用可能なリソースを制限し、登場人物たちの行動に大きな制約を課す。また「社会」の希薄さは、近代的な国家システムの網の目が非常に粗いことも意味しており、自力救済的行動が採られやすい。高山・海洋と並んで、冒険小説の舞台に相応しいと言える。古くはオーストラリアの鉱山を舞台にしたハモンド・イネス『幻の金鉱』、デズモンド・バグリイ本人の砂漠地帯での生活が投影されているであろう『サハラの翼』、急造クルーが乗り込んだ戦車で砂漠を踏破しようとするギャビン・ライアル『砂漠の標的』など、印象的な作品は多い。

マーケットルージュ 真堀橙子/『ガンルージュ』

 あれえ、と渋谷美晴は間の抜けた声をあげた。
 伸ばした指先が触れた缶は、ころりと軽く転がっていく。
「これ、飲んだっけ。こっちは……あ、こっちも空だ」
 まだ中身があるものがいくつかあるのではないかと、布団のまわりに転がったビールの缶を次々と手探る。だが、残念なことにその全ては空き缶であった。
「ちっ。買いに行くか」
 空き缶をまとめることもせず、美晴は面倒くさそうに立ち上がる。自分の迂闊さを理解しているので布団から若干離してぽつんと置いたストーブの、スイッチをしっかり切ってから指差し確認をする。灯油の配送トラックを見て駆けつけた大家から、火だけは出さないようにと頭が痛くなるほど言われているし、自分も住む場所がなくなるのはごめんだ。
 さて、と数歩歩いたところで、雑に積まれた新聞が雪崩を起こした。
「これだから……いらねーっつってるのに」

巣立ちの頃 千倉歩/『槐―エンジュ―』

 初冬の夕暮れに閑散とした、公園の並木道。枯れ葉も落ちつつある樹を見上げながら、女が歩いていた。
 街灯を越えて枝を伸ばすその樹木の名は、槐といった。
 見上げる女の名前もまた、槐といった。

 女にその名を贈った祖母は、多くを語らないまま、砂漠の戦火の中で命を落とした。
 幼い頃、名前の由来を尋ねてみたことがある。
――私が好きな樹なの。
 そう答える祖母の、どこか遠くを見つめるような眼差しが今でも忘れられない。

Friday Night,Blade Fight アイダカズキ/『影の中の影』 

 景村瞬一がそのマンションに足を踏み入れるのとほぼ同時に、自動照明が各階の廊下で灯り始めた。夕闇迫る黄昏時だった。目的の階でエレベーターから降りる。家人たちの帰り着いた部屋で換気扇が回り、夕餉の臭いが回廊に漂い始める。ランドセルを鳴らしながらすれ違った小学生たちが、スーツとショルダーバッグ姿、長身で足音一つ立てない景村をいぶかしげに見た。
1302号室。ここだ。
チャイムを押すと『どなた?』と不機嫌そうな若い女の声が返り、わずかにドアが開いた。若さに似合わないやつれた顔立ちの女がドアとチェーンの隙間から胡散臭そうな顔を向ける。
「お休みのところ失礼。同居されている松尾徹さんの件で、お話があって参りました」

悲しみに閉ざされて泣くだけの君じゃない 一号/『槐―エンジュ―』 

 結論から言えば、タイロン・ワードの人生はクソッタレだ。
 ニュージャージー州のカムデンで、今日も朝から彼はマクドナルドの狭い厨房で滝のように汗を流しながら、黙々とハンバーグを焼き続ける。非正規のパートタイムで自給は5ドル。この店で働き始めて二年経つが未だに出世の見込みはなく、暮らし向きは、ひどく暗い。
 朝から晩まで焼けた、鉄板の上でハンバーグを引っ繰り返し続けている。仕事は単調で、日常生活に支障が出るレベルで太り過ぎている同僚も、未だに満足に英語を喋ることのできないベトナム人も、彼のことを顎でこき使ういけ好かないマネージャーも、誰も彼もが生気に欠けていた。客までもがまるでそれ自体が罰であるかのように機械的にバーガーを咀嚼していて、店全体に、死んだ空気が淀んでいる。
 誰もが「こんなところにいる場合ではないのに」と漠然とした焦燥感を抱えているのだが、しかしその矛先を持て余したまま、どうしていいのかわからずにこの場所にこびり付いている。

「月村了衛の冒険小説愛」全話トーク(語り手:えいちえむえす・ゆりしーず/聞き手:アオヤギミホコ)

 2015年1月から全国書店で展開されたハヤカワの「警察&スパイ&冒険小説フェア」。早川書房で刊行されている小説を著名な作家たちが勧めるというフェア内容で、月村了衛は冒険小説の推薦を行った。月村が選んだ作品の帯には、このような惹句が書かれている。
 〈月村了衛の冒険小説愛〉――〈冒険小説は人生の大海だ。戦いの末に予期せぬ感動が待っている。皆で往こう、あの見果てぬ海へ。〉
 選ばれたのは13作品。順番に紹介すると『女王陛下のユリシーズ号』『ナヴァロンの要塞』『エニグマ奇襲指令』『鷲は舞い降りた〔完全版〕』『高い砦』『シャドー81』『脱出山脈』『シブミ』『不屈の弾道』『パーフェクトハンター』『パイレーツ―掠奪海域―』『暗殺者グレイマン』『ディープゾーン』。
 これら13作品をすべて読んでいる月村了衛ファンは、実はそれほど多くはないはず。1冊も読んだことがない……という読者もいるはずだ(恥ずかしながら、私がそのひとりである……)。
 作家・月村了衛の作品の原点となる、冒険小説の名作たち。どのような物語で、どのような魅力があり、そしてそれらはいかにして月村了衛に影響を与えたのか? 「有限王朝マガジン」では、冒険小説好きのえいちえむえす・ゆりしーずに全作について熱く語ってもらう。

 

以上!絶対におもしろいのでぜひ読んでいただきたく!スペースで待っております!あと通販も予定してます!!