スタジオポノック第1回長編作品「メアリと魔女の花」を見ました。
見終わったあとの感想はこちら。
「メアリと魔女の花」、「あとここをこうしてくれたら5倍くらい好きになるのに!!!」というポイントが10個くらいあって難しい、すごくちゃんとつくってるジュブナイル映画なんですけども!!!
— アオヤギミホコ (@ao8l22) 2017年7月8日
加点法でいくと85点くらいになるんだけど減点法でいくと55点くらいになってしまうので今いいところをリストアップしている。猫がぶさいくなのに可愛いのは超いいところです
— アオヤギミホコ (@ao8l22) 2017年7月8日
「思い出のマーニー」はかなり好きな作品なので、今回はかなり楽しみにしていたのですが、う、う、う、うーん!という感じで難しさを抱いています。
まず大前提として
映像表現はとてもよかった。特に冒頭のシーンはすごいわくわくで「え~、これからどうなっちゃうの~!」という気持ちになった。
あと主人公のメアリのキャラ造形もよいです。目につくものに次から次へと飛びついちゃう。一生懸命だけど空回りしがち。不器用。褒められ慣れてない(から褒められるとすぐに調子のっちゃう)。でもちゃんと「ありがとう」と「ごめんなさい」を言えるいい子。特に最後の要素はすごく意識して作られている(ちょっとプリキュアを思い出しもした)ように思え、それはものすごくジュブナイルとしていい物語だなと思わされます。
メアリは作中でちょっとしたピンチを切り抜けるために嘘をついてしまい、そのせいでピーターを巻きこんでしまうんだけど、それをちゃんと「私のせいだ!」と反省し、ピーターに素直にごめんと言えるんですよね。作中でメインキャラがやらかすつくりってかなり観客にストレスを与えるんだけど、ストレスを与えつつも観客が主人公のことを嫌いにさせないようにするのは、監督の女の子キャラ作りのうまさだなと。
ほかにももちろんよかったシーンはたくさんあって
ふだん褒められ慣れていないメアリが、「君は天才だ!」と褒められて調子に乗ってウソついちゃったり、寝る前に反芻して「へへへ~~」となってるシーンはすごくよかったです。あと現実世界ではコンプレックスになる赤毛を褒められたあとの表情もすごくいい。
あとどうぶつさんたちだいしゅうごうのシーンもいい。入れ替わりも天丼っぽくてよかった。
さらに先輩魔女(その正体は実は……)のキリッとした感じも超絶よかったです。
そして何より猫がぶさいくなのがかわいい。ぶさいくなんだけど動きとかでかわいさを出していて「ぎ、技術力!」となりました。
とはいえ
ここを!!!もうちょっと!!!!こうしてくれれば!!!!5倍くらい好きな映画になったのに!!!というポイントが多くてクネクネしています。
・魔法学校の雰囲気
最初から暗すぎて「ワーッこんな学校にはいりたーい!」という気持ちにならない。例えばハリーポッターとかは「私もホグワーツに入りたい!」と全世界の子どもを惹きつけましたし、「千と千尋の神隠し」は「この世界は怖いし早く帰りたい、でももうちょっといてもいいのかも…」と思ってしまうような圧倒的な魅力がありました。
(どうも魔法学校が怖いのは原作からしてそういう描写らしく、それでいいのかもしれないんですけど)入りはすごく楽しく、メアリも「ちやほやされてうれしいし、本当にこっちの世界で生きちゃおうかな~!」くらいまで浮かれ切ったほうが、そのあとの展開が怖くなっていいと思うんですよね…(好みといったらそれまでなんですけど…)
・登場人物のバックボーンがよくわからない
メアリの描写は魅力的なんですが、それと対照的に、メアリ以外のキャラクターのことがよくわからないです。これは「アリエッティ」でもそうだったかも。登場人物がどういう背景をもっていて、だからこういう行動をする…というのがなくて、感情移入がしづらい。
たとえばピーターはお母さんが病弱だから一生懸命働いている男の子なんですけど、それが台詞で言われるまでよくわからない。(素人考えですが)「ベッドに座っているお母さんと一緒に撮った写真が貼ってある」とか「咳をしているお母さんに声をかけて出かけるピーター」とかそういうシーンがあれば、ピーターの「早く大人になりたい」みたいな台詞がもっとグッときたはず。
あと先輩魔女(というかスチュアートおばさま)の人生もよくわからない。魔法の国から逃げてきてこれまでどうやって生きてきたの? 人間関係はどうしたの? けっこう噂話とか多そうな田舎っぽいけどよそものとして浮かなかったの? 家族は? そもそもこの話何年代のどこを舞台にしてるの?(80-90年代ですかね)とかとか。魔女が昔住んでいた家が「おかえりなさい、もう帰ってこないと思いました」みたいな、ああいうセリフはすごくよかったので、こう、ちょっとでも背景を想像させるような要素がほしかった!
魔法の国の人々は本当に謎で、彼らがどこで生活しているのか、生徒たちはどこからやってきているのか、魔法の国はどれだけの広さがあるのか、全然わからなくて、そういう意味でも世界としての魅力が「惜しい!!」と思ってしまった。また「千と千尋」の話をしますが、湯屋の人たちが魅力的に見えるのって、あの人たちが湯屋で「生きてる」ってことが伝わってくるからなんですよね。
・こんなにジブリっぽい要素を入れんでも!
「魔女の宅急便」の名前はよく出されていますが、もう数多くの「ジブリっぽい」要素が次から次へと出てきて、もちろん監督はジブリの後継者のひとりではあるけど、何もそこまでジブリっぽくしなくても~~~!と思ってしまった。「あのシーンって○○だよね」と特定の作品名が出てくるの、やりすぎるとよくない気がしてしまう。
・作中の登場人物の行動が気持ちでつながってない
たとえばピーターと引き離されて魔女の家にたどり着くシーン、メアリが一瞬完全にピーターのことを忘れたみたいなリアクションとって話が進むんですよね。「ピーター…私、どうしよう!」みたいなことくらい言ってもいいのでは。かなりのんきに「おじゃましまーす」と言っていて、ちょっと笑ってしまった。
・出てきたアイテムが使われずに終わる
「えっ!?」といちばん仰天したポイント。銃は登場したら撃たれないといけないのではなかったか!?「おばさまから渡されるたった一粒のアイテム」が出てきたら、メアリがこれをどう使ってピーターを救うのか?と観客は期待すると思うのですが、まさかで使われずに終わるという…。「えっ、あっ、そういう抜け道が…なるほどね~」と驚きはしましたが、もっと気持ちよくなりたかった…。
メッセージとしては最後にメアリに「魔法はいらない!」と言わせるわけで、あんまり魔法で解決!ってしたくなかったのかもしれないんですけど、でもまあ最後だから景気よく魔法使ってほしかったですよ!!!
思ったより長くなってしまった……。
でも本当にメアリはかわいかったし、ジュブナイルとしてしっかりしていた(ただ、子どもが楽しむかどうかは正直ちょっとわからない。怖くて泣くかもとは思う。気持ちよさや楽しさ的な、作品の快楽は少なめだと感じます)。ポノック2作目の企画が動いたら見に行きます。でもな~~~でも~~~う~~~~ん(モヤモヤした気持ちのまま終わる)。